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ニッキィの大疑問

シェア経済って何なの? 車や部屋「空き」を有効活用

 

2016/8/1付 日本経済新聞 夕刊

 シェアリングエコノミーとかシェア経済という言葉を最近よく目にするけど、どういうものか、いまひとつよく分からないわ。なぜ広がっているのかな。

 シェアリングエコノミーについて、松田正子さん(61)と鈴木裕子さん(44)が西條都夫編集委員の話を聞いた。

シェアリングエコノミーって、どういうものですか。

 「遊休設備や余った時間を有効活用し一時的に貸し出すサービスが世界的に注目を集め、利用者が急増しています。これがシェアリングエコノミーです。代表的なのが自動車の『ライドシェア(相乗り)』と、空き家や空き部屋を宿泊施設として貸す『民泊』です」

 「米国企業のウーバーテクノロジーズは、一般の人が自分の空き時間を使って自家用車で他人を運ぶタクシーのような仕組みを提供しています。利用者はスマートフォン(スマホ)のアプリを使い、地図上で乗車場所を指定し、ウーバーに登録しているドライバーからすぐ来てくれる人を探します」

 「民泊サービスで急成長しているのが、やはり米国企業のエアビーアンドビーです。部屋を提供したい人はインターネットのウェブサイトに登録して宿泊客を募集します。ライドシェアも民泊も、利用したい人の『需要』の情報と、車や部屋を提供したい人の『供給』の情報とのマッチングが重要です。ネットやスマホの普及が需給マッチングを容易にして、シェアリングエコノミーの可能性が広がったのです」

どんなメリットがあるのですか。

 「ライドシェアも民泊も、まず安く利用できます。ウーバーを米国で利用した場合、一般のタクシーの2分の1から3分の2くらいの金額で済みます。なかなかタクシーが来ない郊外でも、5分ぐらいで車が来てくれる利便性も見逃せません」

 「車や部屋を提供する側にとっては、遊休設備や空いている時間を有効活用できることが大きな利点です。米国のウーバーのドライバーには、年金生活者や主婦、英語の苦手な移民など、フルタイムの職に就きにくい人が多くいます。こうした労働力や遊休設備を有効活用できれば、経済全体の生産性が上がります。同時に彼らの社会参加の道も開けます」

問題は起きていないのですか。

 「日本では、自家用車を使い有料で客を運ぶいわゆる白タク行為は原則禁止されています。このため、ウーバーも日本ではタクシー会社と契約してタクシーやハイヤーの配車サービスは提供していますが、自家用車の一般向けライドシェアは未提供です。ライドシェアを提供している国でも、既存のタクシー業界から反発が大きく、摩擦も起きています」

 「民泊でも、ホテル・旅館業界の反発があります。ホテルや旅館は旅館業法という法律で細かく規制されているため、業界には『民泊にも旅館業法を適用すべきだ』という意見があります。民泊に提供されたマンションの部屋に大勢の外国人旅行客が出入りし、ゴミ問題や騒音などで周辺住民とトラブルになるケースもあります」

 「最近はマンションやアパートを1棟丸ごと買って、ビジネスとして宿泊施設にする例もあるようです。このような『ホテル型』の民泊は、一般人が純粋に空き部屋を提供する『ホームステイ型』とは区別して、ある程度規制することも必要でしょう」

課題も多そうですね。

 「ただ、禁止するばかりが能ではありません。ライドシェアに反対する理由として『安全面の不安』がよく挙げられますが、一般のタクシーでも事故は起こります。白タク禁止の例外措置として、普通免許の持ち主が自家用車で旅客を運ぶサービスが一部地域で認められていますが、この『自家用有償旅客運送』のほうがタクシーより事故率が低いというデータもあります。ウーバーはドライバーと利用客がお互いに相手を評価して、過去の評価がどれくらいか確認できる仕組みも用意しています。この相互評価によって、トラブルを減らせるわけです」

 「訪日外国人が増え、2020年には東京五輪もある日本では、民泊の重要性も増しています。『トラブルゼロ』を求めるとなかなか難しいのですが、できるだけトラブルを減らす仕組みを作りながら、シェアリングエコノミーのメリットを生かす方向で規制緩和することが重要だと思います」

■ちょっとウンチク
新しい価値や経験も提供
 少し前に米国出張でウーバーを使って、その便利さに驚いた。デトロイト周辺など10カ所近くで配車を頼んだが、車が来るまでの時間は5分から8分。普通にタクシーを頼めば、軽く30分は待たされそうな郊外の研究所でも、近くにウーバーに登録した運転手がいて、さっと迎えに来てくれる。
 旅先の時間の節約ほどありがたいことはない。取材と取材の合間に、前々から行きたいと思っていたデトロイト近郊のヘンリー・フォード博物館を訪ね、ケネディ大統領が暗殺された時に乗っていたオープンカーなどを見学できた。
 これもウーバーに感謝しないといけない。どこからでも待ち時間なくスイスイ移動できるからこそ、隙間時間を有効活用できた。ウーバーがなければ、「次の約束に遅れたら困る」と心配になって、博物館は諦めていただろう。
 シェアリングエコノミーは今あるサービスの廉価版ではない。既存のタクシーやホテルが提供しきれない便利さやユーザー経験を実現する。それもシェア経済の魅力である。
(編集委員 西條都夫)

■今回のニッキィ
松田 正子さん 医療機関勤務。最近、油絵を習い始めた。「人によって、同じものを描いてもまったく違う絵になる。自分らしさを表現できるのが魅力です」
鈴木 裕子さん 主婦。神社仏閣巡りにはまっている。「仏像に心が癒やされます。神社のこま犬も、神社ごとにいろいろ個性があり、見ていて面白いですね」

[日本経済新聞夕刊2016年8月1日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は8月15日の予定です。

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