オーディオブック、プロが朗読 「ながら読書」が充実
日本最大のオーディオブックサービスはオトバンク(東京・文京、久保田裕也社長)が運営している「FeBe(フィービー)」。ビジネス書や小説、ラジオドラマ、語学、自己啓発書など1万7000冊がある。中でも、ビジネス書は充実しており働く人の支持を集めている。東京都在住の会社員、野村亮さん(28)は「毎朝の通勤途中の電車でビジネス書を少しずつ聴いている。せっかく本を買っても、仕事が忙しくて集中できず読めなかった。音声なら受け身で気軽に聴ける」と話す。
人気作品が多数
サイトで聴きたい本をひとつずつ購入して、スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)、MP3形式の携帯音楽プレーヤーなどで聴く。例えば、著名な心理学者の思想を解説して発行部数が80万部を突破した「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健著)は税別1620円。再生時間は7時間16分で、聴きごたえがある。
サイトでは本がジャンルで分類され、スタッフのお薦めや季節ごとの特集ページも用意されている。中村雅俊さんらが読む「海賊とよばれた男 上」(百田尚樹著、同1728円)、小野大輔さんらの「世界から猫が消えたなら」(川村元気著、同1512円)など、人気作品も数多く並ぶ。
購入した本は端末にダウンロードして専用アプリで聴くか、ブラウザ上でストリーミング(逐次再生)で流す。スマホに音声データをダウンロードしておけば、ストレスなくオーディオブックを楽しめる。
再生は4倍速まで変えられる。1冊聴き終わるのに10時間かかる作品は、2倍速で聴けば半分の時間になる。何度も聞いた本の内容を確認したり、急いだりしているときは2倍速で聴くといった使い方も可能だ。
2015年にサービスが始まったのはアマゾンジャパンの定額制サービス「オーディブル」。月1500円で8000以上の本が聴き放題になる。ジャンルは文芸書から自己啓発、落語、洋書と多岐にわたっており、「色々な作品を聴いてみようかな」と試しやすいところが魅力といえる。
語学の上達に一役
米国で収録した英語音声の洋書も50冊程度ある。ビジネス書や小説、童話まで用意されており、自分のレベルに合った本を何度も聴くことで語学力のアップが期待できる。アプリで再生する際に、便利なのがスリープタイマー機能。停止する時間を設定しておけば就寝前にもオーディオブックを楽しめる。
アールアールジェイ(東京・新宿、橋満克文社長)のサービス「キクボン」はSFやミステリー、ファンタジー作品が中心になっている。SF「銀河英雄伝説」(田中芳樹著)はアニメやゲームにもなった人気作品で、一部のエピソードをアニメの声優が集結して音声を収録した。ファン待望のオーディオブックに仕上がっている。
芥川龍之介や夏目漱石などの名作は無料で配信している。会員登録すればすぐに聴けることもあって、オーディオブックがどんなものか知りたい人にとっては使いやすい。
同じ本でもこうしたサービスの種類によって、読んでいる人が違うことがある。聴き比べて自分にあった読み手を探すのも、オーディオブックの楽しみのひとつになる。
何度も読んだ小説を、オーディオブックという形で読み直せば新しい世界が見えてくるかもしれない。これから夏休みシーズン。帰省の電車に揺られている時などに聴いていた音楽を、本に変えてみる機会になる。
(企業報道部 荒尾智洋)
[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]
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