「怪異」の政治社会学 高谷知佳著
神威に動揺する社会に迫る
昔の人々は、神仏におびえる心をもっていた。寺社でひきおこされる不吉な予兆に、けっこう本気でうろたえている。時の政権がその宗教的な対応へ、おおまじめにとりくんでもいた。
しかし、時代が下るにつれて、そういう霊的な不安は小さくなる。人々は、さまざまな怪異現象を、ある種のエンタテインメントとして、うけとりだす。
この変化を、魔術からの解放として、かたづけるべきではない。著者は、室町時代の霊的社会史とでもよぶべき趨勢に、目をむける。そして、この時代が前の時代より、人々の不安を増幅させていることに、気がついた。世俗化が進行する前に、社会は神威で動揺する度合いを強めている。その歴史的なからくりに、せまる。
★★★★
(風俗史家 井上章一)
[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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