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血友病、新薬で負担軽減 注射は週4回から2回に

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NIKKEI STYLE

 ケガなどで出血したときに止まりにくい病気に血友病がある。血液を固めるたんぱく質「血液凝固因子」が生まれつき足りない。手足で出血を繰り返すと関節が変形してしまう。遺伝子の異常が原因で治ることはないが、たんぱく質の補充で普段通りに生活できるようになってきた。たんぱく質が血中にとどまる時間を延ばす新薬が2015~16年に相次ぎ登場しており、投与回数が減るなど患者の負担軽減につながりそうだ。

30代のAさんは、息子の手や膝に青あざが多いのを気にかけていた。1歳になって尻もちをついたとき、お尻に大きな血の塊ができた。慌てて小児科に駆け込んだ。血液検査の結果、「血友病A」と診断された。

◇     ◇

血管が傷つくと、ふつうは「血小板」という血液中の成分が集まって穴をふさぐ。次に「血液凝固因子」が働き、傷ついた部分にふたをして出血が止まる。血友病のうち血友病Aは血液凝固因子の「第8因子」が足りない。「第9因子」が不足する「血友病B」もある。国内にはAが約5000人、Bが約1000人の患者がいる。大半が男性だ。

血液凝固因子が体内で働かないほど症状が重い。重症の血友病患者では働く血液凝固因子が1%未満という。血液が固まらないと、筋肉や皮膚の下など様々な部位で出血を起こす。足や膝の関節で出血を繰り返すと、関節の内側にある膜に炎症が起こり、関節が変形してしまう。痛くて歩き方がおかしくなり、曲げ伸ばしも難しくなる。一度出血した関節は、出血を繰り返しやすい。

転ぶなどしなくても体内で出血し、見た目には異常が分からない人も多いという。頭蓋内に出血を起こした新生児や乳児の8割超が重症の血友病だったとの報告もある。出血箇所や出血の量が多くなると頭痛や嘔吐(おうと)、けいれん、意識障害などが起こる。後遺症も出やすい。

治療は、病院や家庭で足りない血液凝固因子を注射する方法が一般的だ。出血したときにやる場合と、ふだんから予防のために投与する場合がある。運動会や修学旅行、遠足などケガが心配な行事の前に注射したり、週に数回、定期的に補ったりと人によってやり方は様々だ。

治療ガイドラインには3年前に定期補充療法が加わった。7割を超える重症の血友病Aの患者が定期補充している。どの方法や薬を選択するかは「患者のライフスタイルや状態で変わる。投与量や投与回数は個人によって異なる」(荻窪病院の花房秀次理事長)。例えば子どもの学校生活を考えたとき、サッカー部と吹奏楽部の生徒では出血が起こる可能性が違う。

◇     ◇

薬は、ヒトの血漿(けっしょう)からできた成分と、遺伝子を組み換えて動物の細胞に作らせた成分の2種類がある。16年に登場した血友病Aに対する新薬は、従来の遺伝子組み換え成分を工夫し、血中で分解されにくくした。既存薬では週3~4回の投与が必要だったが、新薬は週2回ですむという。

家庭での補充療法は乳幼児は両親が注射するが、患者の多くは小学5年生ごろになると自分で注射を打つ練習をする。スマートフォン(スマホ)や手帳で出血記録をつける。

日本は先進国の中でも血友病の診断が遅れ、血液凝固因子の働きが5~40%未満にとどまる「軽症」は「ほぼ見過ごされている」(花房理事長)。軽症の人では、生活習慣病を抱える40歳ごろを過ぎてから脳出血や消化管出血で重症になるリスクが高まるという。

血友病を巡っては過去には、治療用に使っていた非加熱濃縮製剤によるC型肝炎やエイズの感染が社会問題になった。いまは、体に入れた血液凝固因子を異物として攻撃する患者自身の拒絶反応が問題になっている。異物がくると、免疫機構が抗体を作って追い出そうとする。止血の効き目が悪くなる。一度に大量の血液凝固因子を投与すると抗体ができやすい。定期投与で、免疫の攻撃を鎮めるという。

新薬や投与法のノウハウが蓄積し、「今は出血がない人生が送れる時代になった」と花房理事長は話す。患者の生活も変わった。体育の授業を毎回見学していたころとは違い、柔道の授業にも参加できるようになってきた。

病気への理解も進むが、社会の対応にはなお課題が残る。今も血友病患者の受け入れに慎重な保育園や幼稚園は少なからずあるという。万が一の出血に不安があるとみられる。このような場合、病院と保育施設が連携し、すぐに連絡が取れる体制を整えて、患者を受け入れた例が参考になる。患者だけでなく周りも正しい知識を身につけてサポートしていきたい。

◇     ◇

患者のほとんどが男性 女性に月経過多のリスクも

血友病の患者はほとんどが男性だ。血液凝固因子に関わる遺伝子が「X染色体」にあるためだ。X染色体は性染色体の一つで、X染色体が2つそろうと女性、X染色体とY染色体だと男性になる。X染色体に異常がある男性や、異常なX染色体を2つ受け継ぐ女性が発症する。遺伝子の異常は、両親から受け継ぐ場合もあれば、突然変異でなる場合もある。

片方のX染色体に異常がある女性は「保因者」という。一方のX染色体が正常ならば、健康な人と同じと考えられてきた。

ただ、近年の研究で保因者の約3分の1が月経過多や鼻血の多さ、産後出血を経験していることがわかってきた。

保因者かどうかは家系調査や血液凝固検査のほか、遺伝子の解析で診断できる。ただし、血液凝固検査は確定診断はできないという。

保因者は血友病の男児を出産する可能性があるが、受精卵の遺伝子を調べる診断は認められていない。

乳児が血友病の場合、お産のときに吸引分娩や鉗子(かんし)分娩で頭蓋内出血を起こすリスクが高まる。より安全な方法として帝王切開を勧める医師もいるという。

患者や家族、保因者の価値観や倫理観はさまざま。知る権利もあれば知りたくないという人もいる。

遺伝子まで調べるかどうかは意見が分かれそうだが「自身の血液凝固因子の働き具合は知っておいた方がよい」(国立病院機構大阪医療センターの西田恭治医師)と話す専門家もいる。

(藤井寛子)

[日本経済新聞朝刊2016年7月3日付]

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