ドン・キホーテの消息 樺山三英著
古典が知的な奇想小説に
今どき、「ドン・キホーテ」というと、17世紀初頭スペインのセルバンテスが書いたトンチンカンな騎士物語より、巨大なディスカウント・ショップのほうを思い浮かべてしまうかもしれない。だが、どっちが正しいかなどという問いは、本書の場合ナンセンスだろう。古典と現代風俗とを混ぜあわせた高度に知的な奇想小説なのだから。
主人公は、ペット捜しを専門にする地味な探偵。舞い込んだ桁はずれの大仕事は行方不明の大ボスを探し出すこと。だが、手がかりがドン・キホーテの書かれざる続編だったことから、探偵は意外な迷路にはまる。ロジカルにしてロマンティックな文体と洒脱(しゃだつ)な感性。暑苦しい古典がこんなにも若々しい現代小説になるとは!
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2016年6月16日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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