半席 青山文平著
老年侍の刃傷事件のなぜ?
作者の直木賞受賞第一作で、六篇(へん)から成る武家小説の名品である。
主人公の徒(かち)目付・片岡直人は、のらりくらりとした上司・内藤雅之から、表の仕事ならぬ頼まれ仕事――その多くは、年も分別もある老年の侍が起こした刃傷(にんじょう)事件の動機をさぐること――を依頼される。誰ではなく何故(なぜ)が、この小説のテーマであり、そこからあぶり出されるのは、幾星霜を閲(けみ)して均衡を失った、恩讐(おんしゅう)、信頼、無念、慚愧(ざんき)等々である。作中には「近頃は年寄りが危ないねえ」との台詞(せりふ)もあるが、私はこの一巻を敢(あ)えて近年の"キレる年寄り"と一緒にはしたくない。
登場人物は、すべて髷(まげ)が結えており、鬘(かつら)をかぶった者など一人もいないからだ。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年6月16日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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