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医療・介護費、知っておきたい3つの還付制度

2016/6/11付 日本経済新聞 プラスワン

 病気やけがの際にかかる医療費や介護サービスを受けた時の費用は、年齢を重ねるほどかさみやすい。高齢夫婦の世帯では両方が一度に重なって負担が高額になることも多い。そんなときに頼りになるのが、一部を払い戻してくれる公的な制度だ。余計な負担を抑えるために、制度について基本的な知識をマスターしよう。

 はじめに、公的医療保険の「高額療養費制度」についておさらいしておこう。入院や通院により医療費が自己負担分(原則69歳まで3割、70~74歳2割)だけで一定額を超えた場合、超過分を還付してくれる。月単位で計算し、負担上限額は所得の状況などにより異なる(表A)。

 例えば65歳で年収370万円以下の人がある月、病院での医療費が100万円かかったとしよう。患者の負担額は、月30万円(3割相当)ではなく、この救済制度によって「月5万7600円」に下がる。病院窓口でいったん30万円を払った場合、差額が後日、還付される。

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 そのためには請求が必要。健康保険組合や国民健康保険など自分の加入する制度が窓口だ。早めに還付を受けたければ事前に「限度額適用認定証」を発行してもらう。病院に提出するとその場で還付を受けられ、負担限度額だけで支払いが済む。

 医療費に関するこの制度については知っている人も多いだろう。それに比べると認知度は低いが、公的介護保険にもよく似た救済制度がある(表A)。「高額介護サービス費」という。介護保険サービスの主な対象である65歳以上の人がいる世帯は特に知っておきたい。

 介護サービス費用の自己負担分が一定額を超えると、超過分が戻ってくる。住民税が課税されている一般的な所得の世帯で負担上限額は「月3万7200円」。請求先は市区町村の介護保険窓口だ。

 医療、介護どちらの救済制度も家計にとって助かるが、それでも、医療や介護が長引けば負担はかさむ。高齢化に伴い、医療と介護の両方で多額の出費が必要になる世帯も増えている。

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 そうした事態に対応し、用意されている3つ目の救済制度がある。医療と介護の費用を合わせて負担上限を設定する「合算療養費制度」だ(表A)。やはり申請が必要だ。

 同じ世帯内で1年間にかかった医療費と介護サービス費の負担合計が、前述した救済制度による還付を受けた後でなお一定額を超えた場合、超過分が還付される。8月~翌年7月の1年間分をまとめて計算する。

 1年間の世帯負担の上限額は所得水準などにより異なる。制度の恩恵がいかに大きいか、夫婦ともに要介護認定を受けている一般的な所得の世帯を想定して試算したのが図Bだ。

 夫(73)は毎月、自己負担分だけで医療費20万円と介護費1万円がかかり、妻(70)は介護費約3万6000円がかかっている。この状態が1年間続いたとすると、単純計算で負担合計は年300万円弱にもなる。

 まず医療費と介護費それぞれについて月単位で救済制度を活用する。かなりの金額が還付され1カ月の負担額は医療費約4.4万円、介護費約3.7万円に軽減される。それでも1年間で合計すると98万円にもなる。

 そこで年間の負担を減らすため合算療養費の制度を活用するとしよう。この例では年42万円もの還付を受けられ、最終的な実質負担額は年56万円だ。何も救済を受けなかった場合の負担額(300万円弱)と比べると、5分の1程度で済む。

 申請はまず、介護保険(市区町村)の窓口で手続きをし、介護保険の自己負担額証明書の交付を受ける。これを添付して医療保険制度の窓口に申請すると支給額が決定される。その後、介護保険と医療保険のそれぞれから支給を受ける流れだ。

 合算療養費で留意したいのは、同じ医療保険制度に属する者同士でしか合算ができないこと。例えば78歳で後期高齢者医療に入る夫の医療費と、73歳で国民健康保険に入る妻の介護費を合算することはできない。現在は医療や介護に頼っていない世帯も含め制度のあらましを知り、いざというときに備えたい。

(生活経済研究所長野 市川 貴博)

[日経プラスワン2016年6月11日付]

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