SNSで転職、じわり 「ゆるく広く」人脈づくり
「おちゃめ」「マメ」「英語ができる」――。
ビジネス用SNSをうたう「Wantedly(ウォンテッドリー)」のプロフィルページに書かれた他人による自分への評価だ。プロフィルには自分の経歴だけでなく、こうした友人からの紹介や、過去に手掛けた仕事など様々な角度から、「働く人」としての自分をアピールできる。
ビジネスに特化
同じくSNSの「フェイスブック」のように縦に画面を動かせる「ニュースフィード」では、自分やつながり合った友人の仕事への考えや思いをつづったコラムなどがずらりと並ぶ。連動したチャットアプリ「Sync(シンク)」を使えば、文書やパワーポイント資料などを共有しながら、チャット会議を開くことも可能だ。
どちらかと言えばプライベートのつながりが中心になるフェイスブックと違い、ウォンテッドリーの最大の特徴はあくまで仕事を軸においている点だ。サービス開始当初の2012年から利用しているというシステム開発会社勤務の木檜和明さん(46)は「目的や使い勝手が絞られてシンプルなため、飽きがこない」と言う。外部の技術者などとの交流に大きく役立っているそうだ。
こうしたゆるい広がりの中で結果として生まれるのがヘッドハントによる転職だ。これまでの転職といえば、転職サイトに登録し、自分に合いそうな企業を選んで人事面談をするケースが一般的。ウォンテッドリーの場合は、SNS上で多くの人と知り合い、自然な流れの中で「一緒にうちの会社で働きませんか?」といったヘッドハントが発生する。運営会社もアプリ自体は無料にし、こうした転職が成立した際に企業側から料金を得る形で収益を確保している。
既にIT(情報技術)やネット関連の業界を中心に利用者は広がっており、月間の活発な利用者の数は100万人を突破しているという。
同様にゆるく関係を広げるのが「yenta」だ。こちらの場合、SNSというよりも「ビジネス版出会い系サイト」をうたっている。アプリに自分のプロフィルを登録すると、まず審査を受けることになる。サービス利用者全体で職種が偏らないか、出会えそうな人が多そうかなどが審査基準だ。
AIが仲立ち
その後、人工知能(AI)が会いたいと思われる人を毎日10人を推薦してくる。自分と相手の双方が会いたいと思えばカップル成立。メッセージのやりとりが始められるようになる。まずランチをするもよし、仕事の悩みを共有する友達になるもよし、一緒に週末起業するもよし、そしてヘッドハントするもよしだ。今年1月のサービス開始以来、既に10万人の出会いが成立したという。
いずれもベンチャー企業のサービスだが、大手転職サイトも手をこまぬいているわけではない。リクルートキャリアの「リクナビNEXT」はスマートフォンの利用者が急増していることを受け、昨年8月にアプリを大幅に見直した。通勤途中や休憩中など「すきま時間」に利用しやすいよう、アプリを開いた瞬間にあらかじめ登録した条件を基に検索結果がいきなり表示されるようにして短時間での利用を可能にした。
スマホの登場でインターネットが身近になったように、転職の垣根も新たなサービスの登場で下がっている。まずは仕事について語り合える仲間を探す感覚で利用してみてはいかがだろうか。
(メディア戦略部 北爪匡)
[日本経済新聞夕刊2016年5月26日付]
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