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暮らしの知恵

肩湯や泡風呂… 進化する浴室、気分は温泉

2016/5/18付 日本経済新聞 夕刊

 たまには温泉でゆっくりしたい。そんな希望を自宅でかなえられるように、入り心地を重視した浴室が増えている。浴槽、床、天井を一体化したシステムバス形式で、自宅のリフォーム時にも設置できるので関心が高まっている。美容や疲労回復に役立つ機能を搭載した最先端の浴室を探った。

 「入浴時間を楽しむことを考え抜いたお風呂です」。4月下旬、東京都内で開かれたリフォームフェア。あるバスルームの前にひっきりなしに親子連れや中高年の夫婦が集まった。壁に32型の大型液晶テレビを備え、肩湯が湧き出るようにした湯船、天井から降り注ぐ打たせ湯……。説明員が次々と機能を披露すると、感嘆の声があがった。

 お風呂アドバイザーのおかきたまりさんによると、男女を問わずゆっくりくつろいだり肌のケアをしたりするため「入浴時間を充実させたいと考える人が増えている」という。

 フェアで展示されたバスルームはLIXILが4月に機能を拡充して発売した「スパージュ」。湯船に備えたヘッドレストの下に吐水口があり、首から肩に厚さ約4ミリメートルの膜状にした湯を流しかける肩湯が特徴だ。首を温めることで血流量が増え、半身浴でも寒さを感じにくくなる。全身浴よりも体に負担をかけずに長風呂を楽しめる。

 深尾修司・浴室事業部長は「自然の風景や音に囲まれて入る温泉のような空間を目指した」。水が流れる音や柔らかい光の照明など聴覚、視覚でも心地よさを感じられる。天井から全身を包み込む形で湯が出るシャワーも備える。朝は目を覚ますためにシャワーを使い、寝る前にはリラックスできる機能を活用するなど、「朝昼晩で異なる入り方ができる」(深尾氏)。

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微細な泡を発生させて乳白色に見える「酸素美泡湯」はショールームで肌触りを確かめられる(東京都港区)

 バスルームはこれまで、浴槽の保温性や掃除のしやすさといった機能面に特化して開発されてきた。「今は心地よさを高めるプラスアルファの工夫が求められている」(深尾氏)。新築時に予算をかけられなかった浴室を、リフォーム時に充実させる家庭も多い。民間調査会社の矢野経済研究所(東京・中野)によると、2015年の住宅リフォーム市場は6兆4757億円(速報値)で拡大傾向にある。

 美容効果に主眼を置いた機能もある。パナソニックエコソリューションズの「酸素美泡湯」は湯の中に霧より細かい直径約18マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの泡を発生させる。肌の角質層の水分量が増え、しっとり感が長続きする効果がある。ぬるめの湯でも体を温めて湯冷めしにくい。同様に約45マイクロメートルの泡を含んだ湯が出る「エステケアシャワー」は泡が汚れを吸着して浮かび上がらせ、皮脂汚れを落としやすくなる。

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 酸素美泡湯はスイッチを入れると細かい泡で湯が白く濁り、入浴剤を入れたような乳白色に見える。東京・汐留にある同社ショールームでは実際に手を入れて泡で水が滑らかな質感に変わるのを体験できる。

 入浴姿勢も快適さを左右する。TOTOの「クレイドル浴槽」「ラウンド浴槽」は、膝を深く曲げずに、全身を自然な状態で伸ばして入浴できる。首を置く場所や肩・背中部分に滑らかにカーブを付け、体の負担を抑えた。

 TOTOは「脳トレ」で知られる東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授と共同で、入浴姿勢と脳の血流の関係を研究。体への負担が少ない姿勢で入浴すると、脳の言語関連の部位で動きが沈静化し、深いリラックス効果が得られることを確認。浴槽の形状に生かす。

 システムバスルームは一般的に工事費別で数十万円台から。広さやテレビ、泡が出るなど追加機能で値段が変わる。リフォーム以外で快適性を高める工夫として、お風呂アドバイザーのおかきたさんは浴室暖房乾燥機を提案する。工事費込みで10万円からで導入でき浴室を暖めて秋冬でも半身浴がしやすくなる。冬場に多い急激な温度変化で体調が急変する「ヒートショック」防止にもつながる。予算や条件に合わせて「心地よさ」を取り入れながら、毎日の入浴時間を至福のひとときとしたい。

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■システムバス伸びる
 浴槽や壁を現場で組み立てるユニットバス(システムバス)は1964年の東京五輪開催時にホテル向けにTOTOが開発し、一般家庭に広まった。キッチン・バス工業会によると、昨年度の出荷数は約142万台で最近は増加傾向にある。

(企業報道部 小川知世)

[日本経済新聞夕刊2016年5月18日付]

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