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囲碁・将棋の対局ネット中継 攻め多彩 女流棋戦や人工知能マッチ

2016/5/18 日本経済新聞 夕刊

マイナビ女子オープン五番勝負の第3局はユーチューブで生中継された(9日、東京都港区)

 囲碁や将棋の対局を動画サイトで生中継する動きが広がっている。プロの頂上決戦のほか、女流棋戦やファンが楽しめる催しも配信され、多彩なコンテンツが楽しめるようになってきた。

 六本木ヒルズ(東京・港)にそびえるビルの29階。窓から東京タワーを望むオフィスに設けられたスタジオで9日、将棋の女流タイトル「女王」をかけたマイナビ女子オープン五番勝負の第3局が指された。

 畳を持ち込んでしつらえた対局場で熱戦を繰り広げたのは加藤桃子女王と挑戦者の室谷由紀女流二段。いずれも20代前半で、第1~2局に続き、2人はこの日も和服姿で対局に臨んだ。

■全世界に配信

 終盤、顔を紅潮させた加藤女王は、勝ちを意識してか、駒を持つ手が震えた。室谷女流二段は顎に手をあてて考え込み、一呼吸置いて負けを認めた。こうした対局の模様は、米グーグルが運営する動画サイト「ユーチューブ」を通じて生中継で配信された。

 全世界で視聴できるユーチューブで将棋の公式戦が生中継されるのは初めて。対局の様子だけでなく別スタジオでの大盤解説や「見る将棋ファン」を意識して、両対局者が食べたおやつのケーキなども紹介。グーグル日本法人の隅田裕也氏は「準備や告知の期間が短かったにもかかわらず、ライブ配信で視聴したのは約2500人に上った。将棋は有力なコンテンツになりそうだ」と期待を込める。

 日本将棋連盟会長の谷川浩司九段も「若い女性が和服で将棋を指す姿は、将棋に詳しくない人でも楽しめる」と話す。英語字幕付きダイジェストの作成も検討中で、海外への情報発信にも弾みがつきそうだ。

 これまでもプロの対局の棋譜はネット中継されていたが、近年は対局の様子を動画配信する例が増えている。こうした流れに拍車をかけそうなのが、米グーグルが開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」と世界トップ級の韓国人棋士、李世●(石の下に乙、イ・セドル)九段との対局だ。

 3月に打たれた5局の対戦はユーチューブやテレビなどを通じ全世界でのべ2億8000万人が視聴したといわれる。最難関の知的ゲームとされる囲碁で、AIが人間を破った歴史的瞬間を、多くの人がリアルタイムで目撃。まな娘と登場したり、負けてうなだれたりする李九段の表情やしぐさにも注目が集まった。

 CS放送の「囲碁・将棋チャンネル」も昨年11月、ネット配信サービスを本格スタートし、対局の生中継の配信数を増やしている。囲碁の井山裕太王座が史上初の七大タイトル独占を達成した十段戦第4局を4月20日、生中継すると「囲碁プレミアム」というサービスの登録会員数は倍増したという。ネット配信では囲碁・将棋ともタイトル戦だけでなく、挑戦者を決めるリーグ戦やトーナメント戦から好カードを月1~4回ほど中継する計画だ。

■迫力の「人間将棋」

4月下旬、天童の「人間将棋」が初めて生中継された(ニコニコ生放送の画面)

 生中継されるのは、真剣勝負だけではない。ドワンゴは動画サイト「ニコニコ生放送(ニコ生)」で4月下旬、将棋駒の一大産地・山形県天童市の春の風物詩「人間将棋」を初めて生中継した。着物やよろいをまとった参加者が駒を装い、プロ棋士の指図にしたがって約15メートル四方の将棋盤の上を動く迫力満点の催しだ。

 戦国武将にふんした対局者の郷田真隆王将と阿久津主税八段は「受けはあるでござるか」「拙者にも分からぬ」といった掛け合いを繰り広げ、ニコ生の画面には視聴者からの笑いのコメントがあふれた。ニコ生では囲碁・将棋のタイトル戦などを中継。なかでも将棋は今や指折りのコンテンツに数えられる。棋士の個性に注目するファンも増え、「イベントでは棋士の素顔や性格が伝わりやすい」(ドワンゴの担当者)という。

 動画サイトの生中継が増えたことで、臨場感のある対局が身近に味わえるようになった。今後、多彩なコンテンツが増えれば「新たなファンの獲得につながる」(将棋連盟常務理事の島朗九段)と期待されている。

(文化部 山川公生)

[日本経済新聞夕刊2016年5月17日付]

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