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大分に「りゅうきゅう」あり 名前もうまい海の幸

2014/10/15 日本経済新聞 夕刊

 「おじいちゃんやおばあちゃんが子供の頃から食べています」と大分県の人が口をそろえたかのように話すのが「りゅうきゅう(琉球)」だ。豊後水道でとれた海の幸が食卓に並ぶ大分。家庭で食べ残した刺し身やお裾分けでもらった大量の魚を使って、甘口のしょうゆ、酒、ゴマなどをベースにしたたれに漬け込み、食べたのが始まりという。

タイ(左)とカンパチの琉球。大分市の「こつこつ庵」では「琉球」と漢字で表記

 スーパーの鮮魚コーナーの一角には「りゅうきゅうのたれ」が並んでおり、大分県のほぼ全域で「りゅうきゅう」は食べられている。ネギや刻みのりをたっぷりのせてごはんにのせれば「りゅうきゅう丼」。茶漬けにして食べれば「りゅうきゅう茶漬け」として違う食感が楽しめる。

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 始まりは漬け込むという調理法からもわかる通り保存が目的だが、大分を訪ねてきた人が店で食べる場合は、保存食とはひと味違う「りゅうきゅう」にお目にかかることになる。

 大分市内の県庁そばの郷土料理店「こつこつ庵」では関さば、関あじ、カンパチ、タイの4種類の「琉球」が選べて、観光客や地元ビジネス客の人気メニューだ。同店では沖縄を意味する漢字表記だ。現在は引退している松本じつお会長(77)は「旅館から郷土料理の店に替えた1970年ごろからずっとメニューに載せており、昔から琉球と言っていました」という。

 同店の「琉球」は注文を受けてから刺し身にたれをかけて提供している。「厳密に言えば漬け込んだものではありません。たれが濁ったり、脂が浮いたりしない見た目もおいしい琉球を楽しんでもらっています」と現店長の松本宗三社長(36)は語る。

 出張ビジネス客が繰り返し訪ねてくるという「花邨」の女将、平岡せつ子さん(65)は「うちはカンパチとタイ。漬け込むと身が固くなり風味を損なうのでしません。関さばと関あじは活魚を提供していて、食べ残った刺し身を使ってりゅうきゅう丼を締めに出すと喜ばれます」と説明する。

 大分市内の別の和食店でも「アジはすぐにたれがしみるので漬けにはしない。カンパチなどは味がしみるまで少しだけ時間をおいている」といったこだわりの声を聞いた。店で食べる「りゅうきゅう」は鮮度重視に進化した現代版。こりこりした歯応えが味わえる。

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