羽毛布団、5万円の商品と15万円の商品は何が違う?
選ぶポイントは
「膨らむ力」が保温を左右
「家具展示場で有名メーカーの羽毛布団を『今なら100グラム増量』と実演充填しながら20万円台で売っていた」。千葉県に住む50代の女性は売り文句につられて買いそうになったという。だがスマートフォンで通販価格をチェックしてみると、高級をうたっていても数万円のものがごろごろあった。「一体何を基準に選んだものやら」と嘆く。
羽毛布団に使われるのはグース(ガチョウ)やダック(アヒル)のダウンとスモールフェザー。ダウン率50%以上なら「羽毛布団」だ。ダウンはタンポポの綿毛のような形で「ダウンボール」と呼ばれる。一般的にグースの方がダウンボールが大きくて膨らみやすい。ダウン一つ一つがたっぷりと空気を含むので保温・調湿性に富むのだ。ちなみにアイスランドに生育するアイダーダックのダウンは、鳥が巣作りのために自らのくちばしで集めたもので、採取法が他と異なる別格のダウンだ。
ダウンボールの大きさは飼育期間によっても異なる。鳥が若いほど小さな未成熟ダウンが多く、同じ充填量でもあまり膨らまない。品質表示ではわからないポイントだ。一方、食肉用の若鳥ではなく、産卵用に数年飼育する親鳥グースから採取するのがマザーグースダウン。では、マザーグースでダウン量が多ければいいのかというと、そうとも言い切れない。
実は飼育地の気候や飼育方法、餌でも大きく違ってくるのだ。一日の寒暖差が大きい寒冷地で、ストレスなく良質な餌で飼育されたものほど、ダウンボールは大きくなる。産地はポーランドやハンガリーが人気だが、フランスやウクライナ、ロシア、カナダなどでも良質なダウンは採れる。
生地・仕立てでも価格差
では何が品質の決め手になるのか。わかりやすいのがダウンパワーだ。羽毛に一定圧力をかけたときの膨らみ具合を体積で示したもので、数値が大きいほど膨らみやすくて保温・調湿性に優れる。日本羽毛製品協同組合では、ダウンパワー値やダウン混率などで4種類のゴールドラベルを会員メーカーに発行する。シングルサイズの場合、希望小売価格の目安は一番上のプレミアムで15万円前後、次のロイヤルで10万円前後、その下のエクセルが6万~7万円前後という。
「プレミアムクラスなら1キログラム程度の充填量でも温かい」と山本正雄専務理事は説明する。逆にニューゴールドだと1.5~1.6キログラムが目安。良質なダウンほど布団を軽くできる。
羽毛布団の品質は、羽毛を包む側生地(がわきじ)や仕立て方にも左右される。「側生地は羽毛の膨らみを邪魔しないソフトな触り心地のものを」と言うのは西川産業(東京都中央区)の杉浦真也・商品第1部ふとん1課リーダー。超長綿や、リヨセル(テンセル)、縦糸に綿、横糸にポリエステルを使う綿・ポリ交織を勧める。布団専門店「眠むの木」(京都市)の矢持正三オーナーは「10年以上快適に使いたいなら綿100%で糸の細い良質な生地を」と推奨する。
冬用布団の仕立ては、キルトの仕切りにマチを使う立体キルトが一般的だ。また、上下でマチの位置が異なる2層キルトだと、布団の厚みが均一化するので保温力が増す。ただし間に使う布の分だけ重くなり、布によっては蒸れやすくなるので注意したい。
質の高い睡眠を得るには布団選びが重要だ。ダウンの産地や充填量ばかりに振り回されずに、通販店でも疑問はどんどん問い合わせ、信頼できる店を選ぼう。「良質な布団は値段もそれなりだが、手入れをしながら長く使える」(矢持さん)ことを頭に入れて購入したい。
(福沢淳子)
[日経プラスワン2014年9月13日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。