荷造り時間の1/3は台所 引っ越し円滑に済ますコツ
荷造り、計画立て事前に
今の時期は全国的に新規の予約を受け付けていない引っ越し業者が多い。4月第1週までは混雑状況が続くようだ。この時期はトラックが足りない。経験豊かな作業員も手薄となる。一切の荷造りを業者に任せるサービスもあるが「きめ細かなところまで手が回りにくい。ピーク時に限り、梱包はセルフでやってもらう方がありがたい」(日本通運引越営業部の芦刈隆専任部長)というのが本音のようだ。
総合情報サイト「オールアバウト」の引っ越しガイド、森真奈美さんも「梱包は自分でやる方が引っ越し後の整理もしやすい」と言う。ただし「陥りやすいのが時間配分のミス」。手始めの寝室で「早く終わりそうだ」と安心してしまい、いざ当日になると時間切れ。「訪れた業者への第一声が『ごめんなさい』というケースが結構ある」
梱包に確実に時間がかかるのはキッチンだ。物が多く、しかも大半が割れ物。液体の入った物も多い。「荷造りにかかる時間の3分の1はキッチンに費やされると見ておいた方がいい」と森さんはアドバイスする。家全体に使える日数が6日なら、2日はキッチンにかかるという計算だ。
荷造りの際に一番頭を悩ませるのが、捨てる物の判断だろう。思い出のある物、いつか役に立ちそうな品、「積ん読」状態だが暇ができれば読んでみたいと思う本……。いろいろあるだろうが、ここは断捨離の精神で臨みたい。家族の間でも捨てる捨てないは最後までネックになる問題だ。「どういう物は捨てるかを話し合い、ルールをつくっておくといい」(森さん)
処理が厄介な物は即刻手配する。粗大ゴミは各市町村の窓口に、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなどは原則、購入店に処分を依頼し、前日までに引き取りが済むようにしておく。
引っ越し業者はペットを運ばない。「高価な熱帯魚ならお金をかけても専門業者にと思うが、意外と困るのが金魚。早めに引き取り手を探しておく必要がある」と森さんは体験談を語る。
冷蔵庫・洗濯機も準備
梱包で失敗しないためにはどうしたらいいか。日本通運引越営業部の徳久顕子さんに話を聞いた。ポイントは段ボール箱の使い分けだ。
「書籍やDVDなど重い物は小さい箱。詰め込み方は6~7割にとどめる」。食器を収めるのも小さめの箱だ。和だんすや洋だんすの衣類は大きい段ボール箱に移し、運びやすいようたんすを軽くしておく。
無料提供の段ボール箱の数を増やしてくれる場合もあるが、ピーク時はそうもいかない。自分で調達する場合は丈夫な物を選ぶ。底は必ず粘着テープで十字補強しておこう。
段ボール箱には中身と運び先の部屋を明示しておく。箱の上ではなく側面の、面積の狭い方に書いておくと、搬入作業中もわかりやすい。
冷蔵庫や洗濯機など大型家電も搬出までに準備が必要だ。取扱説明書で確認しながら、間違いなく準備しておきたい。
テレビやレコーダーはコードを抜いてまとめておけばいいが、引っ越し先での配線作業は自分でしなければならないので、コードごとに接続先を書いたシールを貼っておくといい。パソコンもコードを抜き、データはバックアップしておく。
倒れたら土がこぼれやすい観葉植物などの有無も事前に業者に伝えておこう。「運ぶ荷物が見積もり時から変わるなら事前に教えてほしい」と徳久さん。トラブルなしに引っ越しが円滑に進むかどうかは準備次第だ。
さて当日。搬入・搬出時には何かと家人の指示が必要になる。作業員に的確な指示を出せる人が必ず張り付くこと。人数は1人がベスト。複数人数であれこれ注文を出すのは作業の進行を妨げる。
近距離の引っ越しなら、指示出し役は搬出のメドがつき次第、先発で新居に向かう方が得策だ。交通渋滞などに引っかかり、引っ越し業者より遅れて到着するようでは、搬入の作業時間が無駄になる。床を拭いたり事務的手続きをしたりといった旧居の後始末は、残った家族が担当すればいい。
搬入時の家具の配置換えにも気をつけたい。「こっちの部屋」「いや、やっぱりあっちの部屋」などと部屋を行き来させ、作業員を翻弄するのは避けるべきだろう。スムーズな引っ越しは、引っ越す側と作業する側の協力で成り立つことを忘れずに。
(福沢淳子)
[日経プラスワン2014年3月22日付]
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