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エコノ探偵団

景気回復で転職増えた? 求人数は戻ったが…

2014/2/18 日本経済新聞 プラスワン

 「息子がキャリアアップのため転職すると言っているのですが、そんなに簡単に仕事は見つかるものでしょうか」。探偵の深津明日香は近所の主婦の言葉に興味を持った。「景気回復で、転職はしやすくなっているのかしら?」と調査に出た。

■求人、実績ある人に集中

 明日香がまず厚生労働省の雇用動向調査を調べると、2012年の転職入職率は常用雇用者の9%にあたる417万人。むしろ05年をピークに低下傾向にあることがわかった。そこで安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による“景気回復”が最近の転職市場にどの程度影響しているのか、さらに調べてみた。

 「求人数はリーマン・ショック前の水準に戻ったのですが…」。人材紹介の最大手リクルートキャリア(東京都千代田区)の鶴巻百合子さんが説明した。「以前はとにかく人手が欲しいという企業も多かったのですが、最近は条件に合わなければ採らない企業が増えています」

 企業が求めるのは実務経験が豊富な30代以上が中心という。「営業で表彰されたとか、部下を何人抱えていたとか、具体的な実績が必要です。複数社からオファーがある少数の人とゼロの人たちに二極化しています」と鶴巻さん。

 「実績がない若手の転職は厳しいのかしら?」。そこで明日香は、大学などを卒業後2~3年で転職を目指す第二新卒向け転職フェアを訪れた。出展企業に話を聞くと、「企業内の年齢構成上のバランスを正したい」「新卒採用が入る4月より前から人手が必要」と採用理由は様々。

 運営会社の学情によると、企業の旺盛な採用意欲を受けてこの1年間だけで3度、同様のイベントを開催した。毎回50社程度が参加するという。この日は千人程度が来場。会社が合わないと感じる20代前半や、より高い待遇を求める20代後半が中心だが、社会経験のない大学卒も増えているのだという。

 「双方の要望を一致させるのは大変そう。実際に転職した人たちはどこで就職先を見つけたのかしら」と明日香。厚労省の調査をみると、情報源はハローワーク、広告、縁故がそれぞれ3割弱だった。

 政府は成長戦略で転職支援の強化を掲げ、職業紹介や研修への助成金に加え、ハローワークと民間の連携を進めている。しかし、求職者が職探しやスキルアップの助言を手厚く受けられる環境は整っていない。日本では求職者が手数料を支払って職業紹介を受けるには規制があり、人材紹介会社は求人広告の掲載料や転職の成功報酬を支払う企業側の支援が中心になりがちだ。慶応義塾大学教授の鶴光太郎さん(53)は「求職者の親身になって相談に乗り、その人に合う企業を紹介してくれるようなサービスは育ちにくい状況」と話す。

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