ネットで好みのシェフ選ぶ 自宅でプロの味堪能
ある土曜日の昼、首都圏在住で大学の非常勤講師を務める高橋圭さん(39)は自宅の玄関で、母・維生さん(69)を出迎えた。妻・祐子さん(36)と息子の玲くん(2)との食事会に招いたのだ。
子供・高齢者にも人気
家には別にもう一人が呼ばれていた。東京・吉祥寺のレストランワインバーに勤務するシェフ歴9年のshinobuさん(37)。「家族そろって自宅でおいしい料理を食べたい」と考えた祐子さんが、ネットサービスのマイシェフ(東京・港)が運営する出張シェフサービスのサイトで頼んだ。
マイシェフは1人当たり3000~5000円(食材費、出張費、消費税込み)で、シェフが東京都や神奈川、埼玉、千葉県内(一部地域除く)の自宅などに出向いて料理を振る舞う。
シェフは審査を経た約35人が登録。利用者がウェブサイトで出張場所や希望日を入力すると、出張できるシェフが画面に一覧で表示される。フレンチやイタリアン、和食、旬の野菜など得意分野は様々で、シェフのお薦めメニューも確認できる。1つ条件があり、利用者の中に女性がいないと申し込めない。
まだ小さい玲くんをレストランに連れて行くとどうしても騒いでしまい、落ち着いて食事ができないことが多い。近所には宅配の寿司やピザもあるが、やはり飽きがくる。
shinobuさんは食材を持参し、高橋家のキッチンで料理に取りかかり、前菜のマグロと野菜のタルタル・ビシソワーズソースがけを皮切りに、食べるペースに合わせてパスタ、メーン料理など計4皿を食卓に供した。大人たちは舌鼓を打ち、自宅で安心できるのか玲くんも笑顔だ。圭さんは「本格的な料理が落ち着いて食べられてうれしい。また頼みたい」と話す。
マイシェフの清水昌浩社長(35)は、「当初は小さい子を持つ親の記念日などの利用を想定していたが、外出できない高齢者からの依頼もある。思った以上にニーズは広い」と話す。
健康的な特別食も
ハレルヤ(東京・中央)の「パーソナルシェフ・サービス」は、玄米菜食に基づいた食事法「マクロビオティック料理」に特化しているのが特徴だ。同社のサイトで入力フォームに希望日や目的などを記入して申し込めば、ハレルヤ側が約15人の登録シェフの中から条件に合う人を選んで自宅などに派遣する。週1回など定期的に利用する客には、毎回同じシェフを派遣するようにしている。
価格は主菜、副菜2品、汁物、主食の基本的なコースだと、4人分で1回1万3650円。1回で複数日分の食事の作り置きや、パーティーなどへの出張も受け付けている。糖尿病やアレルギーなどに対応した特別食もある。「自分で作ろうとすれば手間のかかる健康的な食事を、手軽に食べられる」と松本敏弘代表取締役(51)は話す。
ケータリングサービスのワンディッシュ(東京・中央)は出張バーテンダーサービスを手掛ける。経歴5年以上のバーテンダーが13人登録しており、同社サイトで日時や希望するバーテンダーのイメージなどを記入して申し込めば、ワンディッシュ側が希望に近いバーテンダーを選んで派遣する。
2時間の飲み放題や1品ずつの注文などいくつかのコースがあり、総額5万円以上(交通費別)の利用が必要。お酒やグラスはバーテンダーが持参する。花見などの宴会に呼ばれることが多いという。
少子高齢化や女性の社会進出などに伴い、食の分野でも消費者のニーズは多様化している。こうした市場の変化をネット企業がうまく料理し、新たなサービス市場を生み出せれば、食卓は一層豊かになる。
(産業部 広沢まゆみ)
[日本経済新聞夕刊2014年1月23日付]
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