閉鎖型SNSで愛深める 恋人同士で情報共有
破局・復縁時の対応機能も
交際を始めて2年の佐藤雄太さん(24)と吉村友希さん(22)はSNSを使いこなす世代。友人たちとは「フェイスブック」でつながり、2人の会話は無料通話・チャットサービスの「LINE」で済ます。そんな2人がこの1カ月、すっかりはまったSNSがある。リクルートホールディングスが開発した恋人専用SNS「sweetie」だ。
安心して「おのろけ」
きっかけは吉村さんの悩みだった。「フェイスブック上に2人の出来事を投稿したいけれど、友達の目が気になる」。多数の人の目にさらされるフェイスブックでは、あけすけな「おのろけ」はときに嫌がられるかもしれないためだ。
これに対し、sweetieは原則として2人以外は閲覧できない。LINEのような無料チャットもあり、感情表現用イラスト「スタンプ」はイチャイチャぶりを表すものが多い。写真も自由に投稿でき、大切な写真やチャット上のコメントは「想い出ボックス」に保存し、いつでも閲覧できる。チャットの過去履歴が消えてしまうことに対応した設計だ。
それぞれが別の場所で見たものや感じたことをSNS上でつづるという佐藤さんと吉村さん。「2人で会ったときの会話も弾むようになった」と口をそろえる。sweetie上では1日に20回前後もやり取りするという。
カップル同士でも交流できる。知り合いのカップルとsweetie上で友達になれば、お互いのプロフィルを交換できる。実際には会ったことのない友達の恋人の顔やプロフィルをSNS上で見られる。友人同士、カップルの行く末を見守るというコンセプトで採用された機能だ。
sweetieのようなカップル間での利用を想定したSNSは増えている。「Between」や「Pairy」などのアプリがスマートフォン(スマホ)向けに配信されている。いずれもチャットや写真共有のほか、記念日のカウントダウンやデートの日程管理といった機能が盛り込まれている。
カップル解消機能も
もっとも、「万が一、別れてしまったらどうするか」という疑問も湧くだろう。別れた後の元恋人にSNS内の情報を悪用されるリスクも否めない。
sweetieの場合はカップル解消機能が備わっている。解消した側は即座にアクセスできなくなり、解消された側は3カ月間に限って閲覧可能となる。解消後は別の人とカップルを組めるようになる。ちなみに復縁した場合、3カ月以内ならカップル解消以前のデータをそのまま復元できる機能もある。
情報の密度の高さで特徴を出すのが「Path」というアプリだ。自分の居場所や写真、つぶやき、そのとき楽しんでいる音楽、映画、本などを投稿できる。いわば自分の生活の記録(ライフログ)をスマホを介して蓄積する。
ライフログを家族や恋人など親密な人と共有する。限られた気の置けない関係の中だからこそ、濃密な情報を記録でき、かつ共有する楽しみも両立できるわけだ。
「SNS疲れ」といった言葉があるように、特定のSNSに振り回されるのはつらいかもしれない。だからこそ一部の人間関係や機能に特化したSNSを使い分けることで、共有というSNS本来の楽しみは厚みを増して広がるだろう。
(北爪匡)
[日本経済新聞夕刊2013年12月5日付]
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