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スピードが重要 三枚おろし、記者が2週間特訓 失敗したら…たたきやつみれ汁に

2013/11/8 日本経済新聞 プラスワン

 週末の朝、同僚と海に出かけ、大きなアジとサバを釣った。でも、さばけない。骨や内臓をどうしていいか分からないし、においも気になる。食べるのは大好きなのに、何もできない自分にいらだちを覚え、はじめてでもできる、魚のさばき方を探ってみた。

 「簡単よ~、アジなんて」。釣り船屋のおかみさんにさばき方の手順を紙に書いてもらい、自宅でやってみた。ウロコを取り、中を洗って……。紙の指示通りにおろしたのに、骨や皮に身がたくさんついていき、まな板の上は大惨事。手や台所も生臭くなり、気持ちが萎えた。

 魚のさばき方の基本を教わるため、ウェスティンホテル東京(東京都目黒区)の日本料理店「舞」を訪れた。魚を扱う心構えは「きれいに、丁寧に、手早く」。斎藤雅彦料理長はそう教えてくれた。まな板は木製よりも、漂白できるプラスチック製がよい。よく研いで切れ味のいい包丁と、白いふきんを用意する。

 まず、アジのさばき方を見せてもらった。包丁の背でウロコを取り、ぜいごをそぐ。頭と内臓を落とし、血を洗い、骨に沿って三枚におろす。

■頭は一気に落とす 血はこまめに拭く

 仕事の美しさに見入ってしまった。流れるような動作で、かかった時間は1分37秒。まな板の上も整然としている。魚は水や人の体温で鮮度が落ちるので「スピードは大切」。頭を処理するときは一気に落とす。

 刃をぎしぎしとスライドさせると血が散らかりやすく、断面も汚い。洗った魚は腹の中までペーパータオルで水気をふき取り「ふきんでまな板や包丁の血をこまめにふき取れば、きれいに作業ができますよ」。

 斎藤料理長にみてもらいながら、自分でもやってみる。かかった時間は6分47秒。身がベタっとつぶれ、形もギザギザ。「光り物」と呼ばれる由縁である、背の銀色のキラキラした部分も落ちてしまった。

 「1回でさばけるようには誰もなりません。経験ですね」。その後も2時間半かけて、タイ、サンマ、イワシ、イカのさばき方をたっぷり教えてくれた。

 「はい、これで洗うといいですよ」。さらに斎藤料理長は調理後に、ハーブの香りのせっけんを渡してくれた。手につくにおいは、重曹やレモンで洗った後、よい香りのせっけんを使うと驚くほど落ちた。

 イワシ、サバ、サンマにタイ。いろいろな魚で練習した。頭、内臓を取るまではクリアできたが、骨に身が残ってしまう。

 「包丁の入れ方は、背びれが目印」。東京・西麻布にある和食店「魚新」の宮崎神二店長に相談するとこう教えてくれた。「どんな魚も背びれと平行に太い骨が通っている」。包丁を背びれと平行に動かせば、骨に身が残りにくいという。

 さらに「手の感覚に集中し、刃が魚のどこに当たっているか想像すること」が上達のコツという。刃が太い骨に当たると手先にゴツッとした硬い感覚が伝わってくる。骨のぎりぎり上をなぞるようなイメージで包丁を滑らせる。これはタイ、カツオ、イワシなどにも応用できる考え方だ。

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