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暮らしの知恵

漬物がステーキやケーキに 余り物、徹底活用術

2013/10/11 日本経済新聞 プラスワン

 漬物は日本が誇る保存食品。最近は薄味傾向が強くなり、袋をあけると日持ちしにくいという。パン食も増え食卓に上がる回数も減り、使い切れずに冷蔵庫で消費期限を迎えてしまうこともある。いっそ主菜やデザートに変身させて、残さずに有効利用する方法はないだろうか。

 漬物は全国各地でさまざまな料理に活用されている。今回は郷土の知恵に学び、実際に漬物を使って料理してみた。

■岐阜の郷土料理「漬物ステーキ」

 漬物がメーンになる料理を探したところ、岐阜県飛騨市に「漬物ステーキ」という郷土料理があると聞きつけた。早速、たくあんや奈良漬、すぐきなど漬物15種類をスーツケースに入れて、飛騨市にある割烹(かっぽう)「克己」の堀之内雄治さんに教えを請いに出かけた。

 当地では「『漬けステ』と呼ばれ、どの家庭でも白菜漬けの余りを活用して食べている」(堀之内さん)という。作り方は簡単。少し多めの油を熱し、こんがりするまで漬物を焼く。コショウをふりかけ、たっぷりの溶き卵を入れれば完成だ。卵が塩味をマイルドにする。卵の代わりに甘めの「ほうば味噌」を焼いて合わせてもマッチする。

 持ち込んだ漬物を見た堀之内さんは、奈良漬とワサビ漬け、ショウガ甘酢漬けを除く12種類を一気に雪平鍋に入れ始めた。少し発酵が進んで酸味が出てきた白菜漬けの食べ方である「にたくもじ」にするという。「くもじ」は漬物のこと。漬物の煮物だ。「昔からある料理。古くなった漬物を最後までおいしく食べようとの発想で生まれた」(飛騨市観光課の中村篤志さん)そうだ。

 水から煮詰めて沸騰したら煮汁を捨てるのを2、3度繰り返す。最後にだしとしょうゆ、みりんで味付けし、煮ていく。家庭ではソバつゆでだしを代用するといいと教わる。煮込んでも漬物の歯応えがあり、じわっとうまみが出てくる。本来は白菜漬けを使うが、ゴボウや大根、ミブナ、すぐき、しば漬けなど何でも合うことは驚きで、ご飯が欲しくなった。

 一気に余った漬物を消費できる上に「煮て数日たったころがおいしい」(堀之内さん)というように、常備菜にもなる。

 東京に戻り、漬物の種類を17種類に増やして、自宅でも「にたくもじ」に挑戦。京王プラザホテル(東京都新宿区)の市川博史総料理長に持参し、味を見てもらった。「全体に発酵した漬物のうまみがなじみつつ、それぞれの特徴も残っている」と感想をもらう。

 郷土料理の知恵は素晴らしいと実感した。気をよくして、味噌汁に高菜など菜っ葉系や大根の漬物を入れた。味噌は塩気の少ない白味噌が最も合うと感じた。

 卵との組み合わせにも挑戦。ワサビ漬けもだし巻きに入れればさわやかな後味で、お弁当のおかずとして同僚からも好評だった。ショウガ甘酢漬けは細かく刻んで酸っぱいトマトに合わせると、トマトを甘く感じサラダ感覚で楽しめる。

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