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エコノ探偵団

お茶の関連商品増えたのに 栽培面積なぜ減少 緑茶飲料は20年で10倍に

2013/5/14 日本経済新聞 プラスワン

 「新茶の季節だな」。ご隠居、古石鉄之介が探偵事務所で茶をすすっていると、所長夫人の円子が「緑茶エキス入りハンドクリームを使い始めたわ」という。探偵の松田章司は「茶の関連商品が増えて産地は潤っているのかな?」と調査に出た。

■価格下がり畑も減る

 章司は飲料メーカーなどでつくる全国清涼飲料工業会(東京都中央区)を訪ねた。「緑茶飲料の生産量はここ20年あまりで10倍以上に増えました」と後藤泰晴さん(51)が説明する。ペットボトル入り飲料の普及とともに、ピーク時の2005年には264万キロリットルまで伸びた。技術改良によって味も良くなり、飲料市場で人気が定着している。

 「なぜ緑茶飲料が大きく伸びたのだろう」。茶の生産・流通に詳しい関西学院大学教授の寺本益英さん(45)が章司に教えてくれた。「無糖飲料が消費者の健康志向に合いました。カテキンなど成分研究も進み、機能性食品というイメージが浸透したのです」

 「ヒントは機能性素材か」。章司は特定保健用食品「へルシア」を販売する花王に向かった。開発に関わった近藤めぐみさん(37)は「脂肪を消費しやすく、意識せずに摂取し続けられる素材を探してカテキンにたどり着いたのです」と振り返る。発売1年目の03年度は自社予想を上回る200億円を出荷、12年度は約300億円まで成長した。「お茶の効果を広める一助になったかもしれません」

 茶の成分を活用した新市場も生まれた。消臭成分に緑茶抽出物を用いて家庭用除菌スプレーを開発したフマキラーの杉山隆史さん(49)は「天然素材で同じ効果を発揮する別素材はまだありません」という。粉末緑茶を製造・販売する佐藤食品工業の広報担当、土下宗一郎さん(28)も「90年代後半から飲料や食品向けに出荷がぐっと増えました」と話す。

 調査会社の富士経済(東京都中央区)によると、緑茶抽出成分を使った関連市場は11年が49億円で、03年の1.6倍ほどに拡大。約9割は菓子や飲料など食品向けだが一部は化粧品などにも使われる。

 「産地は安泰かな」。章司が全国茶生産団体連合会(東京都千代田区)に尋ねると、専務理事の林翼さん(71)は「実はそうでもないんです」と予想外の返事。資料を見て「あれ、栽培面積は減り続けている」。農林水産省「作物統計」によると、11年の栽培面積は4万6200ヘクタールで、30年前の4分の3の規模。生の葉を加熱乾燥した「荒茶」生産量も80年代初頭の10万トンから90年代末に1割以上減った。緑茶飲料ブームに重なる04年に10万トンを回復し、足元では8万5000トンほどに。

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