汗染み・体臭・メーク崩れ… 汗対策の基礎知識
汗はとかく嫌われがちだが「汗には体温調節という大切な役割がある。汗をかきたくないからと水分摂取を控えたり、冷房を効かせた部屋で暮らしていると、汗腺の機能が弱まり、熱中症などのトラブルが起こりやすくなる」。四谷三丁目皮膚科(東京都新宿区)の医師、山田美奈さんはこう話す。
ただし、汗は放置するとべたついて不快感が増す。「刺激で肌がかぶれたり、毛穴が詰まってにきびが悪化したりすることもある」(山田さん)。汗そのものは無臭だが、皮膚には常在菌があり、汗に含まれるタンパク質や脂質などを分解する。それが独特の臭いを発生させる。
汗対策の基本は、汗を放置しないこと。顔や体の汗は湿らせたタオルや市販の拭き取りシートでこまめに拭き取ろう。「冷房による乾燥や紫外線による刺激で、夏の肌は意外とデリケートになっている。ゴシゴシとこすり過ぎないこと、湿り気のあるもので拭くことが大切」(山田さん)
制汗剤も有効だ。制汗剤には「パウダーで汗を吸着してべたつきを抑える」「殺菌成分で菌の繁殖を抑える」「肌をクールダウンさせる」などの効果がある。資生堂広報部の鈴木玄洋さんは「外出前には体臭予防として殺菌成分を配合した制汗剤をつける。外出先では携帯しやすいシートタイプでこまめに拭き取る。体の部位やシーンによって使い分けると効果的」と話す。
香水などの香りで汗の臭いをごまかそうとするのは厳禁だという。香料と体臭が混じり合って、不快な臭いに変化する恐れがある。
下着も効果的だ。男性は「暑いし、着心地が悪い」と下着を敬遠しがち。ただ素肌にワイシャツを着ると、汗でペタリとくっついて中が透けて見えたり、汗染みや臭いが強調されてしまったりする。
「シャツと肌との間に機能性下着を挟むことで、汗を素早く吸収し、拡散して乾かすことができる」とユニクロの担当者は話す。最近の機能性下着は、菌の繁殖を抑える抗菌防臭、臭いを吸着して分解する消臭、触るとひんやり感じる接触冷感など、ハイテク機能が満載だ。肌触りやフィット感も向上している。
べたつきと同時に、冷房で汗が冷えるという悩みもある。その場合は、生地選びで対応しよう。綿素材は水分をその場にとどめてしまう。合成繊維を使った生地のほうが、水分を素早く拡散させるので冷えが防げるという。
汗が多い人は、替えの下着を携行するのも一案だ。使った下着はきれいに洗濯し、清潔に保とう。
女性は汗や皮脂によるメークの崩れも気になる。「スキンケアの段階から手を抜かないことが、化粧持ちを良くするコツ」と、資生堂ヘア&メーキャップアーティストの岡元美也子さんは助言する。
具体的な化粧法は、まず収れん効果のある化粧水で毛穴を引き締める。次に、化粧下地を顔全体に均一につける。化粧水と下地が肌になじみ、べたべたしなくなったところでファンデーションを塗る。
「ファンデーションを毛穴に塗り込めると、皮脂と混じってどろどろになりやすい。スポンジでトントンと、肌の上に軽く置くように塗るといい」(岡元さん)
外出先での化粧直しも、こすらない、べたべたのまま塗り込めないと心得ておけば、そう難しくはない。
「汗が吹き出る時は、太い血管が通る首や脇の下を冷やすのも手」(医師の山田さん)。さまざまな方法を組み合わせて、汗と上手につきあっていこう。
(ライター 奈良 貴子)
[日経プラスワン2013年5月4日付]
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