ライフコラム

エコノ探偵団

バブルがまた来るって本当?

2013/2/19 日本経済新聞 プラスワン

 最後に明日香はリコー経済社会研究所を訪ねた。証券取引所に勤めた経験を持つ主席研究員の中野哲也さんは「瞬時に世界を駆け巡る“ホットマネー”が膨らんでいます」と警鐘を鳴らす。「投資家が長期的な観点から判断する目を持たないと、小さなバブルが生じてははじけ、国や企業の成長に悪影響を与えます」

 明日香は「金融緩和や値上がり期待というプチバブルの条件はそろったし、繰り返さないよう警戒も必要ね」と思った。

 事務所では所長が「冷蔵庫のビールがいつもより少ないな」と不満そう。すると夫人の円子が「あなたが“泡”に酔い過ぎないよう本数を減らしたのよ」。

<天才や一流学者も大やけど はじけて初めて気付く異常さ>

バブルの象徴といわれるディスコ「ジュリアナ東京」。開業したとき実は既にバブルははじけていた

 多くの人々はバブルがはじけた後でその異常さに気付く。実際、バブルに踊った天才と呼ばれる歴史上の偉人は意外に多い。

 本来の価値からかけ離れた値が付くことを“バブル”と呼ぶようになったのは、18世紀に英国で起きた「南海泡沫(ほうまつ)事件」がきっかけ。サウスシー(南海)・カンパニーという投資会社の株が、値上がり期待から高騰後、暴落した。大損した一人が、物理学の基礎を築き、後の経済学にも大きな影響を与えたアイザック・ニュートンだ。

 経済学者も例外ではない。日本のバブル崩壊後の不況を説明できるとして再注目された「負債デフレーション理論」を打ち立てたアーヴィング・フィッシャーも、1929年のバブルに乗って富を失っただけでなく、暴落直前まで株価の上昇を正当化したとして学者としての名声まで失った。

 バブルの熱狂から冷めるには時間がかかる。扇子を振る“お立ち台ギャル”で知られ、バブル期の象徴として語られるディスコ「ジュリアナ東京」の開業は91年5月。株価がピークを迎えて約1年半後、景気拡大が終わった3カ月後。人々がその後遺症の深刻さを思い知るのは、金融機関破綻による金融危機が起きた97年以降だった。

(松林薫)

[日経プラスワン2013年2月16日付]

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