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温泉食紀行

和歌山・龍神温泉 ゆべし 深山に湧く、美人の湯

2013/2/5 日本経済新聞 プラスワン

 「日本三美人湯」と称されるのが、川中温泉(群馬県)、龍神温泉(和歌山県)、湯の川温泉(島根県)。戦前に鉄道院が「美白になる湯」と記したのがきっかけといわれている。どの温泉も多少不便な地にあり、それほど有名でないのがいい。今回はそのひとつ、紀伊山地の山ふところにこんこんとわく、静かな龍神温泉(田辺市龍神村)を訪ねた。

趣のある上御殿の外観

 紀伊田辺駅よりバスに乗ること1時間強。深山幽谷の地に温泉宿が軒を連ねる龍神温泉に着く。昔なら武将が隠れるにはちょうどよい地だなあと思っていたら、そのとおり。今晩お世話になる温泉宿「上御殿」の女将、龍神千恵子さんに聞くと「7代目までは『源』姓を名乗っていた」そうだ。源頼政の五男、頼氏から29代目に当たるという。本館は国の登録有形文化財。江戸時代に紀伊の殿様が泊まられた「御成りの間」が当時の調度品とともに再現されており、宿泊もできる。

ゆったりと湯につかる(上御殿)

 木造の建物を奥まで進み、階段を下りると川沿いに男女別の内湯と貸し切りの露天風呂がある。内湯の扉をがらりと開けると、湯気がもうもうと煙っている。大きなガラス窓は開放できるようになっており、夏なら渓流の風を感じながら湯あみができそうだ。

 湯につかると、熱くもなく、ぬるくもなく、その肌触りは重曹泉(旧泉質名)らしくぬるりとしてなめらかで、全身がコーティングされたような感覚。まるで化粧水につかっているようだ。まさに「美人湯」と称されるゆえんだろう。マキの浴槽のへりに頭を乗せ、少し長湯すると、湯上がりの冷気も何のその。肌がつるつるとなり、美しくなった気になる。

 近くには宿が数軒あるほか、日帰り湯「龍神温泉元湯」には休日ともなると、多くの温泉ファンが訪れる。

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