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エコノ探偵団

塾の無料テストが拡大、どんな狙いがあるの?

2012/12/11 日本経済新聞 プラスワン

 「塾の無料テストを受けた息子を迎えにいくの」。休日の昼下がり、近所の主婦が駅に急いでいた。あいさつした探偵、深津明日香は首をかしげた。「模擬試験などは塾の収入源だと思っていたけど事情が変わったのかしら」。調査を始めた。

■「埋もれた才能」発掘狙う

 首都圏を中心に小学生の塾を展開する日能研(横浜市)の戸塚校。無料テスト会場の一つだ。早朝から小学生が次々と入ってくる。

 日能研代表の高木幹夫さん(58)が明日香に説明した。「2年から5年までの小学生なら、日能研に通っていなくても無料です」

 同校で午前中に受験した約70人の大半は外部生。小3女子の母親(40)が明かした。「子どもが日能研に通う友人から『無料だから』と誘われました。中学受験の準備です」

 明日香はうなずいた。「塾のテストの受験料は普通、数千円。無料なのは魅力ね」。総務省によると、2人以上世帯の教育費は2011年が月平均1万1630円で00年より16%少ない。教育費は聖域ではない。

 「四谷大塚」「東進ハイスクール」などをグループに抱え、07年に小学生向け全国テストを始めたナガセを訪ねた。今年は大学入試センター試験を想定した10月の「全国統一高校生テスト」が約10万人、11月の「全国統一小学生テスト」(1~5年生対象)が11万人以上の受験者を集めた。社長の永瀬昭幸さん(64)は無料の理由を語った。「受けやすくして埋もれている才能を発掘したいのです」

■1回で5億円の出費

 13年にこの小学生テストに6年生を加え、中学生向けにも同様の全国テストを新設する方針だ。全国テストは1回で5億円ほどの出費だが「後でグループの塾に入る子も多くあまり足が出ません」と永瀬さん。

 塾経営者向けの雑誌を発行する私塾界(東京都豊島区)の社長、山田未知之さん(35)がささやいた。「無料テストは生徒を集める新たな手段で、コストは宣伝費だと塾は割り切っています。収益源となる有料テストは別に続けています」

 日能研によると、無料テストを受けた小学生の3割前後が入塾する。ナガセは系列外の塾にもテスト会場などとして参加を促すことで、教室も増やしてきた。

 塾側の利点はそれだけではない。山田さんは「多くの受験者を集めるとテストの価値が高まります」とヒントをくれた。明日香は中学受験などで知られる早稲田アカデミーで尋ねた。教務部長の入吉弘幸さん(43)が答えた。「統計学の理屈で、サンプルになる受験者を増やせばそれだけ志望校の合否判定など模試結果の信頼度が高まるのです」

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