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エコノ探偵団

先進国の経済成長率、なぜ低い?

2012/10/30 日本経済新聞 プラスワン

 「中国やインドの人よりサボってるわけでもないのに、なぜ日本は経済成長率が低いんでしょう?」。近所の営業マンが汗を拭きながら事務所を訪れた。「確かに先進国は新興国と比べれば低いですね」。探偵の松田章司が調査を引き受けた。

■新興国、発展余地大きく

 新聞を読み返すと、今月48年ぶりに東京で総会を開いた国際通貨基金(IMF)の経済成長見通しの記事が目に留まった。今年の予測は日本と米国が2.2%、欧州各国は1%を割り込んだ。一方、中国は7.8%、インドが4.9%、ロシアも3.7%と高めだ。

 「そもそも経済成長率ってどんな数字だっけ」。章司は計算を担当する内閣府経済社会総合研究所を訪ね、国民支出課の課長補佐、三谷将大さん(30)に説明してもらった。

 「経済成長率は国内総生産(GDP)の伸び率。GDPは国の生産規模を表し、経済の大きさを測るのに使われます」と三谷さん。たとえば原材料を100円で買い、製品に加工して150円で売れば、差額の50円が新たに生まれた価値になる。こうした付加価値を合計したものがGDPだ。

 「どうすればGDPは増えますか」「一般に企業などが生産に使う労働力、生産設備などの資本、技術など知識の量を増やせばGDPも伸びます」と、三谷さんが説明した。

 「成長の勢いが先進国と新興国で違うのはなぜだろう」。章司は慶応義塾大学の土居丈朗教授に聞いた。

 「たとえば1日に食べるパンの数が、先進国では1人10個あるのに新興国では1個しかないとします。数が1個増えたとき、どちらの人の喜びが大きいと思いますか」。章司は「新興国でしょう」と答えた。

 土居さんはうなずき「新興国の方がパンを増やそうと頑張るし、先進国の企業は潜在需要が大きい新興国に工場を建てたいと思いますよね」。パン1個を増やすと先進国の生産量の伸びは10%だが新興国では100%になる。ただ、必要なパンの数が確保されれば「生産量の伸びは先進国並みに鈍っていくでしょう」。日本も1960年代には成長率が10%を超えたが70年代には数%に下がった。

■海外事業の拡大 反映されず

 章司は現場の話も聞こうとトヨタ自動車を訪ねた。「現地のニーズに合った車を提供するため、新興国で生産・販売を拡大しています」。広報部の担当者が説明した。同社の新興国での販売台数は2000年の96万台から11年の320万台に急拡大。全販売台数に占める比率も19%から45%に上昇した。

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