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暮らしの知恵

空揚げ、カリッと作るには? 揚げ方と下味のコツ

 

2012/9/14 日本経済新聞 プラスワン

 外食店のメニューにあるとうれしいのが鶏の空揚げ。カリッと香ばしい衣の食感の後、熱い肉汁が口中に広がり、ハフハフっとしながら食べるのも楽しい。自宅であの味を再現する方法はないものか。大きな鍋がなくても、安い鶏肉でも絶品の空揚げを作るにはコツがあるようだ。

 日本唐揚協会(東京都渋谷区)によると、空揚げの定義は「食材に小麦粉や片栗粉などをまぶして揚げたもの」。おいしい空揚げは好みによって違うが、王道と

 外食店のメニューにあるとうれしいのが鶏の空揚げ。カリッと香ばしい衣の食感の後、熱い肉汁が口中に広がり、ハフハフっとしながら食べるのも楽しい。自宅であの味を再現する方法はないものか。大きな鍋がなくても、安い鶏肉でも絶品の空揚げを作るにはコツがあるようだ。

 日本唐揚協会(東京都渋谷区)によると、空揚げの定義は「食材に小麦粉や片栗粉などをまぶして揚げたもの」。おいしい空揚げは好みによって違うが、王道といえるのは「衣はカリっときつね色、中は弾力があり肉汁たっぷり」。そんな空揚げを何とか自宅で再現したい。

 食材は鶏もも肉、小麦粉、揚げ油。手元の料理本のレシピ通り、肉に酒、しょうゆを振りかけ約5分なじませてから、小麦粉をまぶし、170度に熱した油に落とす。目安の揚げ時間は5分と書いてある。

 30秒もしないうちに衣が茶に色づいてきた。焦がさないように火を弱め、さらに4分半待つ。油から箸で引き上げると、投入した時よりも一回り小さくなった、茶色の塊が姿を現した。小麦粉の振り方がまずかったのだろうか、所々焦げ茶色。きつね色というより、部分部分が焦げたパンダ風になった。

 見た目よりも味で勝負、と皿に盛りつけ食べてみたが、衣はもろく、肉は味がしない。まずい訳ではないが、店で食べる空揚げとはだいぶ違う。

 「家庭の空揚げでよくある失敗パターンは3つ」と教えてくれたのは、料理研究家の沢田けんじさん。「中まで火が通る前に焦げる」「肉が硬く、ぱさつく」「ベタっとした衣」。これを解消するには、揚げ方にコツがあるという。

■「二度揚げ」基本 まず160度1分半、中心部は余熱で

 「肉は68度くらいから縮んで水分が出始める」と沢田さんは指摘する。軟らかくジューシーに揚げるには加熱時間を短くするのが鉄則だが、そうすると中まで火が通りにくく、衣がパリッとならない。その両方を解決するのが「二度揚げ」という揚げ方だという。

 160度の低温で1分半揚げて、全体に火を通す。表面がほんのり茶色になったら、油から取り出し、そのまま2分放置する。中心部はまだ生だが「余熱でじんわり火が通る」(沢田さん)。そして油を190度ほどの高温に上げ、再び肉を入れてきつね色になるまで40秒から1分ほど揚げる。2度目に高温で表面の水分を蒸発させると「カリっとした衣になる」という。

 この方法では、実際の揚げ時間は計3分弱。料理本のレシピより4割も短い。火は通るのだろうか。

 早速、試した。肉を入れ、シュワシュワとささやかな音がする低温の160度で1分半。箸でつまむとまだふんわり軟らかさが伝わる肉を一旦取り出し、待つこと2分。見た目には変化はない。再度、高温の油に投入し50秒ほどすると、色づいたので取り上げた。

 黄金色の美しい空揚げが出来上がった。包丁で切ると、きちんと火が通っており、肉汁がジュワッとあふれ出した。当初は「揚げ時間が短いかな」と心配していたが、大丈夫だった。余熱で肉が加熱されるのは新鮮な驚きだった。

■長時間漬け込み 肉自体軟らかく

 次の問題は味だ。「専門店は独自の下味で腕を競っている」(日本唐揚協会の八木宏一郎専務理事)。人気の空揚げ店は、地元の野菜・果物、秘伝のしょうゆ、ショウガ、ニンニク、ハーブなどを使った特製ダレに肉を何時間も漬け込む。味に深みが加わるだけでなく「酒やフルーツは肉そのものを軟らかくする」。

 そこで、とことんいろいろな下味に挑戦してみた。基本はしょうゆ・酒・ネギの青い部分・すり下ろしたショウガの和風ダレ。そのほかに粉チーズ・バジル・オリーブオイル・ニンニクのイタリア風、ナンプラー・ニンニク・コリアンダーに漬けたエスニック風、白味噌・砂糖・酒の西京漬け風……。全部で9種類の下味を試した。

 もみこんで8時間から12時間冷蔵庫で寝かせ、先ほどの手順で揚げる。時間をかけて下味をつけると、肉に愛着がわいてくる。

 揚げたてを口に運ぶ。ほとばしる熱い肉汁に、スープのようにほんのり優しい味がついている。5分で下味をつけた肉とは異なり、完成後に上から塩を振らなくてもおいしい。空揚げは揚げる前の手間がおいしさのカギを握るようだ。

 好みにもよるが、今の時期に合うと感じたのが、カレーヨーグルト味。ヨーグルト・カレー粉・スパイスのクミン・チリパウダーなどを混ぜ合わせたインド風のタレだ。ヨーグルトの乳酸菌が肉を軟らかくし、程よい酸味で食べ飽きないおいしさだった。市販の「焼き肉のタレ」も使える。玉ネギと一緒に漬けるだけなので一番簡単だ。

 基本のもも肉の手順を応用し、鶏のいろいろな部分も揚げてみた。もも肉よりも脂が少ない胸肉は、揚げ時間はやや短めにする。逆に骨と皮が多い手羽先は、食べるときに肉が骨から離れやすいよう、10分ほどかけてじっくり揚げる。

 下味や衣次第で、北海道名物のザンギから大分県名物のとり天まで、様々なご当地鶏料理にアレンジが可能だ。

記者のつぶやき
 今回苦労したのが油の温度の見極め方。鍋に付属の温度計は反応が遅く、参考にしていると焦げた。右上の図を参考に、肉の状態も見ながらタイミングをつかみたい。
 鶏の空揚げができるようになると、魚、野菜など揚げ物全体がちょっと得意になってきた。レストランはおいしいが、おうちの揚げたてもまた格別だ。
(佐々木たくみ)

[日経プラスワン2012年9月8日付]

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