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「人工甘味料なら太らない」は甘い?

 

2012/8/7 日本経済新聞 朝刊

 メタボリック(内臓脂肪)症候群やダイエットへの関心の高まりから、ノンカロリーやカロリーオフをうたう清涼飲料や菓子が人気を集めている。人工甘味料は、そのほとんどに使われている。しかし米国では最近、人工甘味料でも太るという報告があり、ダイエット効果を疑問視する声も出てきた。人工甘味料を使うことは小手先の対症療法なのか。

 「カロリーがゼロの清涼飲料を飲む習慣のある人は太りやすい」。2011年、米テキサ

 メタボリック(内臓脂肪)症候群やダイエットへの関心の高まりから、ノンカロリーやカロリーオフをうたう清涼飲料や菓子が人気を集めている。人工甘味料は、そのほとんどに使われている。しかし米国では最近、人工甘味料でも太るという報告があり、ダイエット効果を疑問視する声も出てきた。人工甘味料を使うことは小手先の対症療法なのか。

 「カロリーがゼロの清涼飲料を飲む習慣のある人は太りやすい」。2011年、米テキサス大学などがこんな調査結果を発表し、ダイエット食品大国の米国で大きな話題になった。

■ウエストサイズの増加率70%上回る

 研究チームは474人の男女を10年間にわたって追跡調査した。ゼロカロリー飲料を好む人はまったく飲まない人に比べ、ウエストのサイズの増加率が70%以上も上回った。特に、1日2本以上飲む人はウエストの増加率が5倍以上になったという。

 こうした飲料に入っているアスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料は、人間の舌にある甘い味を感じるセンサーに砂糖と同じようにくっつく。このため、甘いと感じるが、消化吸収されないためカロリーがないとされる。キシリトールなどはカロリーが砂糖よりやや少ない程度なのでゼロカロリー飲料には使われない。

 追跡調査でわかるのは、人工甘味料の摂取量とウエストの関係だけ。にもかかわらず、こうした結果から人工甘味料は逆効果と受け取られた。

 例えば、米パデュー大学などは大型のネズミのラットを使った実験で、人工甘味料を使い続けると太りやすくなる可能性を指摘している。ラットを2グループに分け、片方はヨーグルトに人工甘味料を混ぜ、もう一方は天然の砂糖の一種を加えた。

■「省エネ体質」が原因?

 このエサを2週間与えたところ、人工甘味料入りのヨーグルトを食べた方が太った。しかも、人工甘味料を与えるのをやめた後も体重が増え続けたという。

 研究チームによると、本来は甘い味と一緒に体内に入ってくるはずのカロリーがないため、少ない栄養分を効率的に使う「省エネ体質」になるからではないかという。人工甘味料を砂糖と同じようにとると、血糖値の制御に関わるホルモンのインスリンが出るように働くため、太りやすくなるとする動物実験もある。

 これに対し、「動物と人間では、体質などが大きく違う」といった反論も多い。もともと食べ過ぎの人が人工甘味料入りの清涼飲料を多く飲んでいるだけではないかという指摘もある。ただ、人工甘味料が甘さを感じさせるだけなのか、それとも太る作用があるのかについては、不明な点が多いことは確かだ。

■適切な使用なら効果も

 そんな中、米心臓協会と米糖尿病学会という2つの学会は今年7月、玉虫色の見解を発表した。「人工甘味料は砂糖を減らすひとつの手段だが、長期的にみると糖分の摂取量を抑えてダイエットにつながるかどうかはわからない」という。

 糖分は適正な量なら問題はないが、とりすぎると中性脂肪が増えて肥満になり、心臓病や糖尿病にかかる危険性(リスク)が高まる。心臓協会は09年に糖分の摂取量を適正な水準に抑えるよう勧告している。代替品として人工甘味料への期待は大きいが、長期の効果を推奨してよいか結論を出せるデータは今のところないようだ。

 調査したスタンフォード大学などの研究チームは「適切な使い方をすれば」という条件つきで人工甘味料は効果があるとみている。甘味の味覚を研究する東京大学の三坂巧准教授は「食生活全体をきちんと見渡し、栄養をとりすぎがちな人が余剰分を減らすために、砂糖を人工甘味料に置き換えるという使い方がよいのではないか」と指摘する。

 ゼロカロリー飲料を飲んでいるからといって、カロリーをとりすぎてしまえば元も子もない。日本栄養士会は「低カロリー、カロリーゼロだからといって、人工甘味料をむやみにとるという食生活は避けるべきだ」と指摘している。

 「野菜や果物、豆類、魚、赤身肉などを中心とした食生活を心がける」。米心臓協会のガイドラインは、糖分の摂取量を減らす最善の方法をこう示している。文明の利器に頼って「簡単にやせよう」と考えるのはやめる。こう肝に銘じた方がよさそうだ。

(鴻知佳子)

ひとくちガイド
《インターネット》
◆人工甘味料を活用した低カロリーレシピなら
 【味の素KK】低カロリー料理集(http://www.ajinomoto.co.jp/lcr/index.html)
《本》
◆砂糖についても知るなら
 「砂糖の事典」(日高秀昌・岸原士郎・斎藤祥治編集、東京堂出版)

[日本経済新聞朝刊2012年8月5日付]

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