香りの新常識 香水はウエストから下に
最近は男女を問わず、香水をつける人が増えている。香りを強調した化粧品やせっけん、柔軟剤などを使う人も多くなり、さまざまな香りがあふれる。気温や湿度が上昇して肌の露出度が高まるにつれ、自分や他人のにおいも気になってくる。香りのルールとマナーについて改めて確認しよう。
香水はファッションのひとつ
「香水は特別なものという意識が薄れ、最近はファッションのひとつとして楽しむ人が増えている」。香水の輸入販売大手、ブルーベル・ジャパン(東京都港区)の星谷奈央子さんはこう話す。香水の選び方も変化し、異性にアピールするというより自分のためにつける人が多くなった。
香水は賦香率(成分のうち香料の濃度)によって4種類に分けられる。厳密にいう「香水」は賦香率15~30%の「パルファン」を指す。ただカジュアルな使い方が定着したいまは、濃度が薄めで価格も手ごろな「オードパルファン」「オードトワレ」が商品の主流になっている。
男女兼用の香りが増えたことと、ユーザーの好みが多様化し、大ヒット商品が出にくいことも最近のトレンドだ。
「香水が日常化したにもかかわらず、みなさん使い方が難しいという。店頭では、どこにつければいいかいう質問が一番多い」と星谷さんは明かす。
ストレートに香るの避けたい
香水を胸元、首、耳の後ろにつける人は多い。「それも間違いではないが、相手の鼻の高さにつけるとストレートに香ってしまう。自分の嗅覚もまひし、次第に量が増えていく」
控えめに香らせるコツは、ウエストから下につけることだ。アルコールと水に香料を混ぜた香水は揮発性。足首やひざの内側、ウエストにつけると、ふわりと立ち上り、上品に香る。ひじの内側、手首もいい。
スプレー式の香水は肌から15センチは離し、広く「面」でつけ、1カ所1プッシュにとどめるとつけすぎを防げる。香りが強く残るので、洋服にはつけない。
日本の夏には「こってり」より「さわやか」
香り選びは自分の好みを優先させてかまわない。ただし「香りの好みは十人十色。周囲への配慮は忘れずに」と国内香水メーカー、武蔵野ワークス(東京都国分寺市)の原田知子さんは指摘する。
日本人はかんきつ系、グリーン系などさわやかな香り、フローラル系のかわいい香りを好む傾向がある。「日本の夏は湿度が高いため、こってりと重い香りより、さわやかな香りを選んだほうが、自分にも周囲にも負担が少ないのではないか」と原田さん。
香水は時間とともに華やかな香りから落ち着いた香りに変化する。狭い場所に出かける時、仕事で人と会う時は、30分ほど前につけておくとスマートだ。控えめであれば時と場所は厳しく問われないものの、すしや会席料理の店、見舞い、葬儀の場では香水をつけないのがマナーだ。
複数使うときは同じ系統の香りで
香水と同じ香りのボディーソープが登場するなど、香りアイテムも広がっている。香りを強調した海外ブランドのせっけんやボディーケア商品のショップが増え、日用品に香りを取り入れることは普通になってきた。香りを身につけるためのお香やアロマオイルもある。
柔軟剤に対する香りのニーズはとりわけ顕著だ。花王香料開発研究所の長塚路子さんによると「服を着ている間まで香りをさせたい」とアンケートに答えた人は、2006年の30%弱から10年には65%(39歳以下の女性)に増えた。「体臭や洗濯物のにおいを気にする人が男女ともに増えたことや、手軽に香りを楽しみたいというニーズが背景にある」
香りアイテムが増えて選択肢は広がった一方で、香り同士がぶつかるのではないかという疑問もある。「香水から日用品まで、香料から作られるのは同じ。複数の商品を使う時には、同じ系統の香りで統一感を出すと無難」と原田さんは提案する。
(ライター 奈良 貴子)
[日経プラスワン2012年4月14日付]
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