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鳥取・倉吉 「遥かな町へ」の舞台歩く 谷口ジローの世界堪能

 

2012/3/3 日本経済新聞 夕刊

 欧州で評価が高い漫画家の谷口ジロー。代表作「遥(はる)かな町へ」は東京に住む48歳の主人公が昭和30年代の郷里の町にタイムスリップする物語だ。作品の舞台になった鳥取県倉吉市には昭和のレトロな街並みがそのまま残る。コミックを片手に時空を超える旅に出た。

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打吹山と重なる白壁土蔵の赤瓦。玉川沿いに古い商家の建物が残る

 「遥かなまちへ 倉吉」探訪は市が6年前に始めた作品に登場する風景を探し歩くツアー。白壁土蔵が立ち並ぶ打吹地区にある観光案内所でコミック、地図、ガイド冊子を受け取れば、そこから旅の始まりだ。

 作品でタイムスリップが起こるのは主人公の母が眠る寺の墓前。寺のモデルになったという満正寺にまず向かった。江戸・元禄年間、鳥取池田藩の城代家老、荒尾志摩の菩提寺として建てられたという。この寺は古来、伝わる占星術で恋愛運を占うなど、若者に人気のパワースポットになっている。コミックを取り出し、実際の寺と見比べるとそっくりだ。作者が忠実に風景を描写したことが分かる。

 平成から昭和へ移動し、14歳に戻った主人公は生家である父の営む洋服店へ向かう。生家の場所を探してみた。それらしき店が満正寺から歩いて1分のところにあった。作品と店の名が違う。本当にそうかとウロウロしていると、中から女性が出てきた。松嶋あつ子さん(62)。「漫画の店はうちで間違いない。もう10年も前に閉めた。作品は電気のタコ足配線など昔の様子がよく描かれている」と話す。

 松嶋さんの家の前から東に延びる通りは作品にもよく登場する旧本町通商店街につながる。ここは昭和30年代の懐かしさが漂う。おもちゃと駄菓子の店があり、ウルトラマンの大型人形が置いてあった。「森永キャラメル」や「明治チョコレート」など当時の看板を掲げる店もある。市は街自体を博物館にする「倉吉レトロまちかど博物館」構想を進めており、商店街の店はそれぞれ家に残る伝統の品々を店先に展示、レトロな雰囲気の演出に一役買っている。

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