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暮らしの知恵

ビーフシチュー 特売肉を軟らかくするには?

2010/10/22 日本経済新聞 プラスワン

 これからの季節、コトコト煮込んだ温かい料理が恋しくなる。その代表格はビーフシチュー。肉は、口の中でとろけるように軟らかいほうがいい。できれば、圧力鍋がなくても、短い時間でも、特売品のかたまり肉でもおいしく仕上がる方法があればと、いろいろ試した。

 まず大型食料品スーパーに肉の買い出しへ。「煮込み用」とラベルに記された特売品のかたまり肉は100グラム100円。一方、その横にはサシが入った同480円の肉があり、こちらの方が断然おいしそう。だが、ここはあえて特売肉を選んだ。

 ビーフシチューは料理本で見た有名シェフのレシピ通りに作ることにした。最初は買った牛肉をそのまま使う。約4cmの角切りにし、フライパンで焼き目を付けて、タマネギ、ニンジン、トマトなどの野菜と一緒に約2時間煮込み、ソースを加えて味を調えて……。

煮込むだけでは 予想通りの硬さ

 見た目はおいしそうなシチューができたが、主役の肉が予想通り、硬い。ナイフは力を入れないと動かない。前後合わせてナイフを13回動かして、やっと切れた。口に運んでもゴムをかむような感覚。歯の間には繊維が挟まり、ソースを味わうどころではなかった。

 さて、この肉を軟らかくする方法は。料理本やネットの料理サイトなどで調べてみると、多かったのはいろいろな食材に漬け込んでから煮込む方法だ。紹介されているのは赤ワイン、ヨーグルト、キウイ、パイナップル。この4つを全部試してみることにした。

 赤ワインとプレーンヨーグルトはそのまま、キウイとパイナップルは角切りにして、それぞれ肉が隠れる程度の量に漬け、冷蔵庫で一晩寝かせる。そして翌日、同じ作り方で煮込んでみた。かみ応えさえあった肉が軟らかくなるものか。

 明らかに軟らかくなったと実感したのはキウイに漬けた肉。あの硬さがウソのようにフォークでもほぐれる。ナイフでは3回半ぐらいで切れた。キウイも少し一緒に煮込んだのでほんのり甘く、子どもも喜びそうな味わい。同じ果物のパイナップルに漬けた肉も、軟らかさ、味ともにキウイと似ていた。

 ヨーグルトに漬けた肉も、キウイほどではないが確実に軟らかくなった。味の深みならヨーグルトに軍配を上げたい。マイルドな中にさわやかさを感じ、食が進む。インドの伝統料理、タンドリーチキンはなぜヨーグルトに漬け込むのか、少しわかった気がした。

 赤ワインに漬けた肉はあまり軟らかくならなかった。よくレシピに登場するのに、なぜだろう。実験結果を携えて、女子栄養大学短期大学部の宮入照子准教授を訪ねた。

 「赤ワインに含まれるタンニンは、肉の臭みを消し、風味を良くするんですよ」と、宮入さん。軟らかくする効果も若干あるが、それを生かすには「ワインに酢、油、タマネギを調合して一緒に漬けるとさらに効果的」だという。

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