働き方・社会貢献

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僕たちはどう働くか

「あなたにしかできない仕事」はない NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹(4)

 

2013/10/29

 起業して5年ほどたったとき、僕は働き方をドラスチックに変えました。長時間労働をやめ、定時で働くことにしたのです。

■社員を壊してしまうかも

駒崎弘樹(こまざき・ひろき) 1979年東京都生まれ。99年慶応義塾大学総合政策学部入学。在学中よりITベンチャー経営に携わる。卒業後フローレンスをスタート、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスとして展開。13年4月に内閣府「子ども・子育て会議」委員に就任。  一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2カ月の育児休暇を取得。

 起業すると、最初は死ぬほど忙しくなります。パワーがいるので、一時期は仕方がないのかな、と思います。でも社員が増えてきたのにみんなで同じように働いていると、社員にしわ寄せがいって、ひずみが生まれます。あるとき、そのことに気がついたんです。

 僕が働き方を変えようと思ったきっかけは、いくつかありました。

 まず、フローレンスで働いていた女性スタッフ、特に優秀な人がどんどんやめていきました。それとほぼ同じころ、公務員をしていた知人が重度の鬱になったんです。とても明るくていい人だったんですが、ある朝、起きることができなくなった。

 「もうダメだと思う」。その彼から突然電話がかかってきました。駅のホームにいるらしく、電話の向こうからゴーッという電車の音が聞こえてきました。本当に焦りました。彼は無事でしたが、非常にショックでした。

 話を聞いてみたところ、上司のマネジメントが非常によくなくて、ストレスフルな仕事と長時間労働を強いられていたことがわかりました。話を聞きながら、こうも思いました。上司が彼を死の直前まで突き落としたのと同じように、自分も社員の人生を壊してしまうかもしれない――。その可能性に気がつき、怖くなりました。

■常に忙しくある必要はない

 働き方を変えないといけない。そう思いました。でもどうすればいいのか。ベンチャー企業の経営者は忙しい……。

 「なぜベンチャーの経営者だから忙しいのか。それはあなたの思い込みでしょう」

 ある方に相談したら、あっさりと言われてしまいました。確かによく考えてみると、常に忙しくあり続ける必要はない。忙しいことが会社にとってプラスになっているかといえば、そうでもない。

 結局のところ、不安だったんです。忙しくしていないと、せっかく立ち上げた組織(フローレンス)が倒れてしまうんじゃないか、と。それは「正しい忙しさ」ではなくて、不安を解消するための「疑似的な忙しさ」だった。その自分の心のメカニズムに気がつきました。

 じゃあ午後6時には家に帰ってみよう。朝は世間で定時といわれている9時に出社してみよう。

 初めはすごく不安だったのですが、実際にやってみたら特に問題はなかった。代表である自分がいなくなると社員のみんながサボるんじゃないかと思ったら、そんな様子もなかった。

 逆にいいことがたくさん出てきました。家族や友人との時間が生まれて、精神的にも余裕が出てきて部下にも優しくなれた。これはいい。

 自分だけじゃだめだと思って、社員にも勧めました。「帰れ!帰れ!」って。でも染みついている文化がありますから、みんななかなか帰らない。仕事は変わらずたくさんある。どうすれば定時に終わらせることができるか。そこで「働き方革命」を起こしたんです。

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