くらし&ハウス

シニアの道具箱

読書量が急増 電子書籍がかなえてくれるシニアの夢

2013/2/14

 「シニア向けの便利な道具があると聞いたが、どこで入手できるのかわからない」「年をとった親のために、バリアフリー商品を買いたいのだが」――。最近、そんな悩みをよく聞く。筆者は30歳代前半で眼病を患い、視覚障害者(ロービジョン=弱視)になって以来、20年近く「共用品・ユニバーサルデザイン(UD)商品」の取材を続けてきた。この連載では、「モノが見づらい」「足腰が衰えてきた」などの悩みに応じ、筆者の実体験に基づいたお役立ちグッズやサービスを紹介していく。(ジャーナリスト 高嶋健夫)
藤沢周平『蝉しぐれ』(文春文庫)の文庫版(左)と「Kindle Paperwhite」の画面の比較。文庫本は8ポイント、書籍リーダーでは「14ポイント・ゴシック体」に設定してある

 長年真面目に勤め上げて、やっと手にした自由の時間。これからは思う存分、好きな読書を楽しみたい。リタイア後のシニアの多くがまず思い描くのは「読書三昧の日々」。学生時代に読んだ古典をまた読もう、忙しい現役時代にはできなかった全集読破に挑戦しよう、と夢は膨らむ。

 ただ、問題は視力の衰え。「老眼や白内障が出てきた今の視力では、文字の小さい文庫や新書を長時間読み続けるのはかなりしんどい」というシニアも多いはず。

 連載第1回では、そんなシニアのための快適読書術を紹介しよう。最近はオーディオブック、大活字本などシニアに優しい“ニューメディア”も充実してきた。まずは電子書籍から。

■組み体裁を“自分仕様”にカスタマイズ

 読書好きのシニアの中には「しょせんはIT(情報技術)に強い若者向けのオモチャだろ」と決めつけたり、「本はあくまでも紙で読むもの」と頑なに拒否したりする人も多いが、それは「食わず嫌い」と申し上げたい。

 電子書籍は、シニアにこそ最適な読書媒体だ。実際に筆者の読書量は、電子書籍を本格的に活用し始めたここ1、2年で飛躍的に増加した。目を患って以降、仕事以外で本を読むのが苦痛で、読み始めても読書スピードが極端に遅いため、なかなか読了する本が増えなかった。それが最近では、若い頃に近いペースで読書を楽しめるようになっている。「急回復」した理由は以下の3点にある。

 (1)専用端末(書籍リーダー)や個別の書籍アプリによって仕様の違いはあるものの、電子書籍は活字の種類・大きさ、行間・行送り、縦組み・横組み、さらには背景色(紙の本で言えば本文用紙の種類)などを自由に調整・設定できる。つまり、視力や好みに応じて「組み体裁」を読みやすくカスタマイズできるのだ。紙の本では不可能だったこれらの点が、電子書籍の最大の利点といえる。

 (2)1度買えば、専用端末の他、スマートフォン(スマホ)、タブレット(多機能携帯端末)など複数のIT機器で同じ本を読める。つまり、同じタイトルの本を何冊もそろえるのと同じで、読書環境のTPOに応じて使い分けることができるので、読書機会を増やすことができる。例えば7インチクラスの専用端末・小型タブレットの版面(はんづら)は画面の実寸でほぼ文庫本と同サイズ、重さも200グラム前後と文庫本並みなので携帯性に優れている。一方、10インチクラスの大型タブレットの版面は四六判からA5判サイズで、書斎での読書に適している。

 (3)肝心のコンテンツも急増中だ。電子書籍ストア・アプリには「ゼロ円」、つまり無料で提供されているコンテンツも多く、特に著作権の切れた古典・名作は品揃えが豊富。紙の本ではなかなか手が出ない稀覯(きこう)本のたぐいでも簡単に入手できるのだ(ちなみに、筆者が最初に読んだ電子本は「i文庫HD」アプリからダウンロードした石原莞爾『最終戦争論』である)。青春時代に戻って「今ふたたびの読書生活」をもくろむシニアにはうれしい「無料サービス」で、わざわざ専用端末やタブレットを新規購入しても、すぐに元は取れるだろう。

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