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山盛りイクラ・透けるイカ… 札幌、驚異の回転ずし 出張グルメの達人・札幌編

 

2012/12/8

 豊富な海の幸に恵まれた北海道はすし屋のレベルが違う。高くてうまいのは当たり前だが、札幌のすし店は激しい競争の結果、地元ならではの鮮度と驚きの安さを両立させている。5000円もあればお釣りがくる店を3回にわたって紹介しよう。まずはもっとも手軽だが満足感はあなどれない回転ずし。

 一歩店内に入ると威勢のいい太鼓の音が響く。ここは回転ずし店、なごやか亭の白石本通店(札幌市白石区)。三浦和宏店長が力強くバ

 豊富な海の幸に恵まれた北海道はすし屋のレベルが違う。高くてうまいのは当たり前だが、札幌のすし店は激しい競争の結果、地元ならではの鮮度と驚きの安さを両立させている。5000円もあればお釣りがくる店を3回にわたって紹介しよう。まずはもっとも手軽だが満足感はあなどれない回転ずし。

 一歩店内に入ると威勢のいい太鼓の音が響く。ここは回転ずし店、なごやか亭の白石本通店(札幌市白石区)。三浦和宏店長が力強くバチを振っている。

 運営会社の三ッ星レストランシステム(北海道釧路市)にとって、白石本通店は133席を擁する最大規模のすし店。1時間ごとに職人らが太鼓をたたき、店内の雰囲気を盛り上げる。谷川富成社長は「子どもの誕生日と聞けば祝いの気持ちを込めてたたく。その場の状況に応じて喜んでもらえる工夫をこらしています」と笑う。

■皿からこぼれそうなイクラの山

 回転ずしといっても、なごやか亭では職人が目の前で握る。ネタ、シャリとも大きいのが特徴だ。ネタが皿からはみ出すほど。一目で105円均一の回転ずし店との違いが分かる。デカネタサーモンは1皿136円で食べ応えがあり、お得感が強い。

 こぼれいくら(525円)はイクラの軍艦巻き。「たくさん召し上がって下さい」。三浦店長が目の前で皿からあふれるほど盛りつける。これだけの量のイクラを一気に食べたのは初めて。独特の食感を堪能できる。

 ネタだけでなく、ノリ、ワサビ、ガリなどにも凝っている。手巻きのノリは上質な九州・有明産を採用。とろたく手巻き(273円)をほお張ると、ノリのぱりっとした風味が口に広がった。

■すしは握りたてより……

 「メニューは130種類ほど。ちょっと多すぎるくらいの品ぞろえ」と谷川社長。基本メニューは1皿126円から525円。季節メニューでもう少し高いものもある。

 ネタのほぼ半分は北海道産で、イクラだけでも道産品を年25トン仕入れている。一方、サバは九州で買い付けるなど、北海道内外に仕入れのネットワークを広げている。1500円ほどあれば満足できそうだ。

 「握りたてより、少し時間がたってからの方がうまい」。谷川社長が意外な話をしていた。

  • 三浦店長のたたく太鼓で盛り上がるなごやか亭
 握りたてのすしはシャリが温かく、ネタは冷たい。両者の温度が近付くのを待った方がおいしく食べられるという。とはいえ回転している間にネタが乾いてしまうと味は落ちる。サバ、マグロなど乾きやすいネタは、できるだけ注文が入ってから握るように配慮しているそうだ。

 谷川社長直々のお薦めは、タラバガニ・数の子・本まぐろ中とろの3点盛(630円)。ボタンえび・活あわび・すじこの3点盛(630円)や、こぼれいくらも好評という。なごやか亭は北海道内では札幌9店、釧路4店、帯広2店。このほか関西に2店あり、計17店。今後は北海道外の店舗網も拡充する方針だ。

 「はいよっ」。注文するたびに、店内に威勢の良い掛け声が響く。ここは北海道内に8店舗を構える回転ずし店、根室花まる札幌手稲前田店(札幌市)。

 「どこにも負けない鮮度に加え、お客様を元気にする店がコンセプトです」と、自身も寿司を握るという高田幸明店長は力を込める。

 同店は2011年9月にオープンした。カウンターとボックス席で計66席を備える。売りは新鮮な食材で、約100種類のメニューのうち2割が根室産という。ネタはシャリを覆い尽くすほど大きい。

■舌の上でとろけていく白子

 高田店長がこの季節に勧めるのは根室海峡産・真だち(315円)。マダラの白子で、透明感のある乳白色の外観と滑らかな食感が特徴だ。

 寒風と厳しい波が打ち付ける根室海峡のマダラの白子は濃厚な甘みがあり、ポン酢との相性が抜群なのだ。舌の上でとろけてなくなってしまうのがさみしい。でも幸せだなあ。

 冬の根室産メニューでは、脂の乗り切った大型サンマを使ったしめサンマのたたき(231円)、青ぞい(同)、活ほっき(273円)、生ほたて(315円)と選ぶのが大変。結局、全部頼んでしまった。

 定番メニューとなった花咲ガニの鉄砲汁(273円)は真っ赤に色づいたカニが見るからに食欲をそそる。濃厚なダシがしっかり出ており、体の芯から温まる。

 すしの価格は1皿136円から420円まで。店員が毎朝のネタの仕入れ状況を確認し、その日のお薦めメニューをレーンに流したり、黒板に書いたりしてアピールする。

■お店すべてが「根室」

 店のデザインから「根室」のムードを出す。漁師番屋を意識したインテリアに、木箱で覆った照明が素朴な雰囲気を醸し出す。

 根室市に住む作家の手による筆文字や魚介類の絵を飾っている。カウンターのそばには、魚をさばく姿を目の前で見られる調理場がある。カニやホッキ貝などを入れた水槽がいくつも並び、いつでも新鮮な食材を提供できる。

  • 花まるではサンマなど根室の海の幸が堪能できる
 花まるは1994年に設立された。2000年に札幌に進出して以来人気に火がつき、現在は道内に回転ずしと通常のすし店で計11店舗、2012年9月期の売上高は29億円と急成長している。

 「たくさんの人から花まるがもらえますように」。清水鉄志社長は1号店を開いたとき、店名を一般に募集した。応募用紙に書いてあった根室住民のコメントがこれ。経営の原点として心に刻む。すしネタも接客もまさに「花まる」の元気の良さ。快進撃はまだまだ続きそうだ。

■おとなの回転ずし

 「利益を上げすぎると本社から怒られてしまうんですよ」。ススキノの商業施設ラフィラの地下2階にある回転ずし店、魚一心(さかないっしん)

 白と黒を基調にしたシックな雰囲気の店内で越前孝助店長に店舗運営の心構えを聞くと、こんな答えが返ってきた。「利益はできる限りお客さんに還元する。それが基本ですから」

 東和システム(札幌市)が運営する同店は10年ほど前に開業した。店名の由来は「魚一筋心を込めて」。

 飲食店が頻繁に入れ替わる激戦地にあって「広告は原則しない」という方針を貫きながら、口コミなどで顧客の支持を広げてきた。

 すしの価格は基本メニューで1皿100円から430円まで。定番だけで約60品ある。常連客の男性(42)は「味と価格のバランスがいい。ススキノでは貴重な回転ずし」と評する。

■脂がのったところを炙りで

 メニュー表を見渡すと「炙(あぶ)り」の文字が多いことに気づく。

 炙りさば、炙りほたて、炙り中とろ……。定番だけで7~8品はあるそうだ。

  • 仕入れの状況によって当日張り出すメニューはどれもお薦め(魚一心)
 一番人気のつぼ鯛(だい)塩炙り(230円)は2年ほど前に導入した一品。ほろりとした身の軟らかさ、焼き目の香ばしさ、脂の甘さが口いっぱいに広がり、シャリとの相性も絶妙だ。ついつい「もう1皿!」と叫びたくなる。

 ちなみに裏技になるが、メニューにないネタでも「あぶってほしい」と頼むと、時間があれば対応してくれるそう。職人さんの顔色をみて判断しよう。

 昨年から提供を始めたという3貫セットが人気メニューだ。まぐろ三昧(中トロ、ビンチョウ、赤身)は330円、えび三昧(甘エビ、蒸しエビ、大エビ)は230円と値ごろ。

  • 炙りメニューも豊富な魚一心
 その日の仕入れ状況に合わせ、白身魚、貝類などを3貫セットで出す日もある。このほか、真ダチ、生カキなど当日店内に張り出すメニューはどれもお薦めだ。

 回転ずしは一般に客の回転率も早い。ただ、同店では客にゆっくりとくつろいでもらおうと、店づくりに気を配る。

 象徴的なのはカウンター席の間隔だ。通常よりも10センチ以上広くとったという。

 落ち着いた空間を演出するため、照明なども工夫する。一人はもちろん、友人との食事からデートまで使い勝手はすこぶるいい。「大人のお客さんが多い」(越前店長)という言葉はうなずける。

 「イカ、さばきますよ。いかがですか」。カウンター内で生きたままのイカを持った従業員が練り歩き、客から注文を募る。超ビッグとっぴ~北野通店の名物、活いか(220円)だ。

■水槽からお皿へ直行、イカ、ツブ、ホッキ

 向こうが見える透明なネタが載ったすしを口に入れると、コリコリした食感が心地よい。口の中に甘みが広がるが、生臭さは全くない。

 北野通店は店内に水槽を設け、原則毎日、函館から生きたイカが届く。季節により種類が変わり、12月末にはマイカからヤリイカに切り替わる。道内の回転ずし店で活イカの提供は珍しい。

 とっぴ~は、えりも産のツブ貝、苫小牧産のホッキ貝、浜益産のホタテ(いずれも220円)も生きているものをさばいて提供する。手ごろな値段で北海道ならではの味を楽しむにはもってこいだ。

 運営会社とっぴい(札幌市)の笹沼祐介営業事業部長は「とっぴ~は回転ずしの高級店と格安店の中間に位置する」と説明する。

■大きめカットのネタ、味もボリュームも

 北野通店には約90種類のメニューがあり、1皿の料金は120円、170円、220円の3種類。サーモン(120円)やまぐろ(170円)といった人気メニューは、ネタが直径16センチの皿からはみ出ており、格安店と比べて食べ応えがある。

  • ミョウバンを使わないウニ、活イカなどを格安で味わえるとっぴ~
 上生うに(170円)は保存のためのミョウバンを使わない塩水ウニを使用。1皿1貫だが濃厚な味わいで苦みが無く、高級店と比べても遜色ない。

 北野通店は周囲になごやか亭や根室花まるなど競合店が林立する激戦区にある。生き残りのため、割安で新鮮なネタを扱うだけでなく、生ワサビを採用するなどきめ細かい企業努力が垣間見られた。

■回らない回転ずし

 「うちはすしが回らない回転ずしなんです。全部注文を聞いてお出しします」。ススキノの繁華街で屋上にある観覧車が目立つ商業施設ノルベサの地下にあるのが、回転すし活一鮮南3条店だ。

 児玉仁店長の言葉通り、レーンに流れているのは、活たこ、生さんまといったメニューを示すポップ広告。皿の色で支払いがわかりやすいという回転ずしの特徴だけを導入した形だ。

 白い木のカウンター席と、テーブルは仕切りがある個室感覚の座席になっている。家族連れやカップルでも他の客を意識せず食べられるのがいい。

 「女性の一人客の常連さんも多いですね」と児玉店長は話す。同店は東京や川崎に店を出す東京建物グループの経営だが、後から出した札幌の店が本店で、こちらから新鮮な道産食材を送っているとのこと。

 カウンターにあった本日のおすすめメニューを眺めると、活たこ(増毛、189円)、釣りあじ(苫小牧、252円)といった各地の旬の魚がそろっている。

■女性もうれしい一貫ずつのセット

 「おいしいネタを一貫ずつ食べられるのがうれしい」と女性に特に人気なのが、日替わり3貫(294円)だ。

  • 一貫ずつ楽しめるその日のセットも狙い目だ(活一鮮)
 この日は本マグロの赤身、小柱のマヨネーズあえ、マグロ軍艦巻きの3つが一皿に載って出てきた。

 マグロは築地からというので、地元ならではの根室の生さんま(252円)や八雲の青つぶ貝(294円)を注文すると、てらてらと輝いたネタのすしを次々と手渡された。

 〆サバを頼むと「しっかりしめたのと、浅じめのがありますよ」と児玉店長が聞いてくる。「どう違うの?」と聞く前に「浅じめはサバらしい脂ののった味を楽しめますよ」と言葉が重なる。この声がけのタイミングが対面のすし店のように楽しい。

 児玉さんは地元札幌・円山にある名店、すし善で修業した職人だという。

  • 皿の色で値段を明示するという回転ずしのいいところを取り入れた活一鮮
 「例えばアラ汁でも鮭(さけ)のアラを用意している時があれば、ソイやボタンエビの頭で出せるときもある。気軽に『何がある?』と声がけしてもらえれば、私もうれしいですね」

 レンコンはさみ揚げやサバ味噌煮といったつまみメニューを攻めても良さそうだ。出張族がちょいと腹を満たしてから、さらに夜の街へと繰り出すのにいい。

 (村山浩一、田中映光、北村信也、阿曽村雄太、小野沢健一)

次回は12月15日(土)に掲載します。

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