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ブームの予感(日経MJ)

赤ちゃんがみつばちや妖精に 寝相アートにママ夢中 つらい育児の合間、創造する楽しみ

 

2012/12/2

 「みつばちハッチ」「虫歯菌」「ティンカー・ベル」。赤ちゃんが寝ている間に、シーツの上に洋服や雑貨を置いて物語の一幕のようなシーンを作る。それを撮影し、ブログや交流サイト(SNS)で発表する。それが「寝相アート」。母親たちの間ではやっている。我が子のかわいさを発信するのに、他人が見ても面白いと思えるネタにするのがミソ。時にはつらい育児も、創造と発信の楽しみがストレスを吹き飛ばす。人気の秘密はそんな

 「みつばちハッチ」「虫歯菌」「ティンカー・ベル」。赤ちゃんが寝ている間に、シーツの上に洋服や雑貨を置いて物語の一幕のようなシーンを作る。それを撮影し、ブログや交流サイト(SNS)で発表する。それが「寝相アート」。母親たちの間ではやっている。我が子のかわいさを発信するのに、他人が見ても面白いと思えるネタにするのがミソ。時にはつらい育児も、創造と発信の楽しみがストレスを吹き飛ばす。人気の秘密はそんなところにあるようだ。

■生後9カ月の娘を「みつばちハッチ」に

  • 赤ちゃんの寝相を生かし、自宅にある物を使って寝相アートを楽しむ今井さん(神奈川県伊勢原市)
 11月上旬の午後10時すぎ。神奈川県伊勢原市の主婦、今井優子さん(30)は生後9カ月の娘が寝ているベッドの周りを抜き足差し足で歩く。茶色のタオルや緑のTシャツを丸め、横向きに寝ている娘の周りに手際よく並べる。作業開始から約10分。娘の腰にそっと黄色のタオルをかぶせ、今井さんの黒いベルトを載せると、娘が花の周りを飛んでいるかのように見える「みつばちハッチ」の絵柄が完成。ベッド脇の椅子の上から構図を確認し、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)で写真撮影して終了だ。

  • 「みつばちハッチ」をテーマにした(今井さんの作品)
 今井さんは6月から、娘をディズニーのキャラクターに見立てるなど10種類以上の寝相アートを作っている。使うのは自分や夫(30)の服、娘のおもちゃなど身の回りのモノだ。写真は自身のブログやフェイスブック、ツイッターに投稿。娘が夜泣きするなど、体力的にきつい子育てだが、「自分の世界観が出せるので達成感がある。周りからも褒められ、気分が明るくなる」という。

  • ディズニーキャラクター「ティンカー・ベル」になりきる(今井さんの作品)
■「ただのお昼寝が幸せな時間に」

 ミキハウス子育て総研(大阪市)の藤田洋社長は、「赤ちゃんが寝ている時は母親に余裕が生まれる」とした上で、寝相アートには「母親の創造的な作業により、毎日同じ寝顔の我が子に色を付けられる面白さがある」と指摘する。7月から毎月1回寝相アートを作っている名古屋市の女性会社員(27)は、「ただのお昼寝が幸せな時間に感じられるようになった」という。

  • 「ねぞうアートの本」の作者の小出真朱さん(右)とモデルとなった娘の温乃ちゃん(東京都世田谷区)
 ブームの火付け役は、7月に出版され、これまでに3万部を発行した「ねぞうアートの本」(ぶんか社、本体価格1143円)の著者で漫画家の小出真朱さん(41)だ。2010年9月に娘を出産。昨年7月、海外の寝相アートの絵本を見たのを機に、バーテンダーで夜間出勤のため娘が寝ている姿をなかなか見られない夫(32)に見せるために作り始めた。昨年9月には娘の1歳の誕生日を記念して、ヨットに乗っているように見える寝相アートを夫がツイッターに投稿。一晩で約2000回リツイート(転送)された。

■ミクシィに寝相アートのコミュニティー

  • 「宇宙旅行」。小物使いで宇宙を表現(青木さんの作品)
 小出さんはこれまでに約200の作品を作っており、投稿当初は50人ほどだった夫のツイッターのフォロワー数は現在は1600人以上に増えた。「ミクシィ」では昨年11月に寝相アートのコミュニティーができ、現在約2400人が登録している。短期間での広がりについて、藤田さんは「笑いを誘う話題性のある寝相アートは、他人が見ても面白いと思える数少ない身内ネタ」とその要因を指摘する。

 09年に結婚した小出さんは「独身時代は正直子供が好きでなく、他人の子供の写真を見せられて反応に困ったこともある」と明かす。出産後は、「子供がかわいく、他人に見せたくて仕方ないが、ツイッターなどで不特定多数の他人が見たときにどう感じるかが気になる」。そこで「オチがつく寝相アートなら皆が見て楽しめるのではと思った」という。

  • 赤ちゃんが「筋トレ」。本物のおもりも活用(青木さんの作品)
■背景にコスプレ文化の浸透

 7月に男児を出産した自営業の青木水理さん(28)は10月、寝相アート専用のブログを開設した。8月から作り始めた40種類ほどの作品を投稿。アクセス数は1日約3000にのぼり、「独身の人からも『癒やされる』というコメントをもらう」という。寝相アート以外にも我が子の写真を撮っているが、「あえて人に見せるモノでもないので載せていない」。

  • 「虫歯菌」。歯が生えた記念に(森さんの作品)
 ベネッセコーポレーションの育児雑誌「ひよこクラブ」の仲村教子編集長は、「写真スタジオなどで、赤ちゃんに衣装を着せてキャラクターに見立てるコスプレ文化の浸透が背景にある」と分析する。スタジオアリスでは、10年から始めた、ディズニーのキャラクターに扮(ふん)する合成写真が作れる特設店舗が好評といい、現在は昨年末時点より7店多い16店まで増やしている。東京都目黒区の男性会社員(32)は10月、娘の1歳の誕生日を記念して、娘をディズニーの人魚キャラクターに見立てた1枚約6千円の写真を3枚撮影。寝相アートも作っており、「お金をかけずに面白いネタが作れるのが手軽」と話す。

■夫婦間にゆとり生まれる効果も

 他人受けのいい寝相アートだが、夫婦間にもゆとりをもたらしているようだ。主婦の森奈央さん(39)は9月、寝相アートを作ってブログに投稿し始めた。夫は仕事の帰り道に森さんのブログをチェック。「仕事で気が張っている夫の気分を和らげているようだ」と森さん。夫の帰宅後に「今日の作品良かったね」などと会話するのが楽しみという。今年も残すところあと1カ月半。来年の年賀状では、これまでと一風変わった子供の寝顔の写真を見る機会が増えそうだ。

(大島有美子)

[日経MJ2012年11月14日付]

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