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病気・医療

通院の負担ない「訪問診療」 利用広がる

2012/11/28

 病院に行くのが難しい人や、病気を患いながら施設ではなく自宅で過ごしたいと希望する人のために、医師が定期的に患者宅を訪れて診療する訪問診療が広がってきた。実際にどのような人が診療を受けているのか。訪問診療を担う医師を増やそうと支援プロジェクトを始めた岡山市で、診療に励む医師に同行してみた。
血圧などを測る看護師の横で、患者に様子をたずねる小森医師(岡山市)

 「背中の痛みが引かないんです」。岡山市にある自宅のベッドで逸見節子さん(87)は、ももたろう往診クリニックの小森栄作医師に訴えた。背中を触診した後、治療方針を説明した上で、小森医師は同行した看護師に痛み止めの注射の準備を指示した。

 呼吸器疾患のため在宅酸素療法を行いながら自宅療養している逸見さんが訪問診療を利用し始めたのは2011年11月。以前は大学病院へ通院していたが、長時間座ることが難しく、長いすで横になって診療を待った。病院で動けなくなったこともある。

 そんなとき、自宅を訪れる介護支援専門員(ケアマネジャー)が、医師が自宅を訪れ診療する制度を教えてくれた。「家から出なくて済むので楽になり、生活の質が向上した」と逸見さんは話す。

■公的医療保険の対象に

 子どもが急に熱を出したときなどに医師が患者宅を訪れるという昔ながらの往診と異なり、訪問診療は医師が定期的、計画的に患者宅を訪れる。通院が難しいと医師が判断した患者であれば、訪問診療は公的保険の対象になる。

 利用者は増えている。厚生労働省の社会医療診療行為別調査によると、2011年5月(6月審査分)の訪問診療の回数は106万2716で08年5月(同)の61万2117に比べて約7割も増えた。

 以前なら入院して治療を受けていた疾患でも、最近は自宅から通院するケースが増えてきた。この場合、通院が患者と家族の負担になる。

 小森医師が定期的に訪れる岡山市の男性、Aさん(74)は神経難病を患い、吸痰(きゅうたん)のために気管を切開し、栄養も胃にあけた胃ろうから取っている。以前は定期的に病院へ通っていたが、通院する日はAさんの妻のB子さん(68)が介助して車いすに移動し、介護タクシーを手配して病院へ向かっていた。診療を終え、会計を済ませてからまた介護タクシーを呼ぶ。「病院へ行く日は大変だった」とB子さんは振り返る。今は小森医師が定期的に訪れ、気管に入ったチューブなども自宅で交換している。

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