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舞台・演劇

神奈川芸術劇場キッズ・プログラム「暗いところからやってくる」 大人も楽しめる現代の怪談

2012/8/3

 夏休みに子供とお芝居をみたいけれど「お子様」向きの甘い味つけはちょっと……。そんな親御さんにお勧めなのが神奈川芸術劇場のキッズ・プログラム「暗いところからやってくる」だ。目に見えないものを見る。それはどういうことか、演劇でしかできない方法で楽しませてくれるのだ。すれからしのシアターゴーアーをうならせる1時間20分の新型ファミリー劇場。

 亡くなったおばあちゃんの古い木造家屋に引っ越してきた男子中学生の身に不思議な出来事が起きる。夏休みも終わりなのに段ボールの整理がつかず、部屋は散らかっている。中学生の少年はクモが住みつき、自然の闇が近くにある家が気味悪い。夜にきしむようなヘンな音が聞こえたり、欄干にかけたシャツが落ちたりするので闇の中に何かが潜んでいるとおびえ始める。

 次いで再現シーン。奇妙な衣装を身につけた「闇に住む者」たちが現れ、柱を力いっぱい押してきしむ音を出したり、シャツを落としたりする。中学生を怖がらせていたのは、この異界の人種の仕業だった。人間には彼らの姿は見えず、声も聞こえない。人間観察をなりわいとする彼らの間には上下関係があり、間抜けな新人がその訓練を受けているようなのだが、見える見えない、聞こえる聞こえない、のドタバタ劇が傑作で、子供たちを大いに笑わせる。

 やがて闇の気配に敏感な少年は「闇に住む者」の出来の悪い新人と声だけ通じ合うようになる。亡くなる前、ぼけ始めていたかに見えたおばあちゃんをめぐる少年の心の傷が語られて……。

 この芝居を勧めたい理由の第一は、俳優の魅力。生の空虚さをカラッとした演技でとらえ、高い評価を受ける劇団イキウメの主力が生き生きと輝いているのだ。中学生役が本当に少年に見えるのも驚き。この役を子役にせず、しかもリアルに表現できるのは、童顔で声も甲高いイキウメの大窪人衛がいるから。演技の練度で少年を感じさせるプロフェッショナルな選択。

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