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舞台・演劇

地人会新社「シズウェは死んだ!?」 不合理な差別の現実をユーモラスに描く

2012/5/17

 南アフリカ共和国の代表的な劇作家、アソル・フガードがアパルトヘイト(人種隔離政策)の差別に苦しむ黒人を描いた問題作「シズウェは死んだ!?」が上演されている。文学座の鵜山仁演出で、嵐芳三郎、川野太郎による濃密な2人芝居。黒人政権が誕生した南アではアパルトヘイトはなくなったが、世界的に人種、民族性などによって差別される構造は普遍的で、先進国に広がる経済格差の犠牲者となっている「アンダークラス(最下層)」の姿に直接かぶさってくる。

 ポートエリザベス市の原住民指定居住区にある写真館。壁に写真などを貼ったスタジオで、主人のスタイルズ(嵐)が新聞を読んでいる。独力で写真館を始めたスタイルズが、昔工場で働いていた話や、顧客の話をとうとうとまくし立てる。冒頭から約30分間はひとり芝居の趣だが、嵐芳三郎は役柄通りに口八丁手八丁で物語をころがし、飽きさせない。語りの緩急の間合い、小気味よく動く身体の所作、顔の表情の変化などで情景を描写し、歌舞伎の舞台で育ってきた芸の厚みを感じさせる。

 やがて、シズウェ・バーンジ(川野)がおずおず写真館を訪ねてくる。名前を聞かれて、口から絞り出されたのはロバート・ヅウェリンジーマ。なぜ、名前を偽ったのか。それは、カメラのフラッシュがたかれてから始まるシズウェの回想で明らかになる。

 コーサ族出身のシズウェは田舎のシスカイ州の居住区に出頭しなければならない身だが、職を探しにポートエリザベスに不法滞在し、友だちの知り合いのブンツゥ(嵐の2役)の家に厄介になっている。ブンツゥと飲みに行って、路上に倒れていたロバート・ヅウェリンジーマという身分証明書を持つ死体と出会い、ブンツゥの勧めでロバートと入れ替わることにした。同じ部族出身のロバートは単身で、しかも労働許可証を持っている。入れ替われば町に居続けられるという誘惑にかられたのだ。名前などに固執せず、他人に成り代わってでも故郷の妻や子供を生きさせようとする強い精神に光が当たる。

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