健康・医療

医人たちの挑戦

予防からみとりまで 「包括ケア」の地域医療に あすか山訪問看護ステーション統括所長・平原優美さん(5) 最期まで我が家で

2012/4/29

 あすか山訪問看護ステーションは0歳児から100歳を超える高齢者まであらゆる年齢の利用者のあらゆる疾患に対応しています。在宅療養支援診療所と連携して24時間体制で緊急対応し、「自宅での療養」という希望を実現することで、地域医療を支えてきたと自負しています。

小児患者を訪問看護するあすか山訪問看護ステーションの平原優美統括所長

 病院からの退院後、訪問看護を引き受けてから数日で亡くなる人が後を絶ちません。「もう少し早く関わっていたら」と悔しい思いをすることが多くなりました。

 訪問看護は外来化学療法中で通院する人も利用できます。副作用へのケアや全身状態を整えることで、じっくり闘病する気持ちを後押しし、希望する化学療法を続けられるように支援します。

 新生児集中治療室(NICU)に入院する超低体重児の乳児も在宅療養に移行できます。訪問看護師は人工呼吸器を付ける子供をケアすると同時に、母親の不安も和らげます。にぎやかで暖かな我が家で生活することは、子供にとってよい刺激になるのです。

 最近、NICUを退院する家族と、ほかの地域の訪問看護ステーションのコーディネートを始めました。NICU経験者がいないステーションでも受け入れができるように、退院前から受け入れ先のスタッフと一緒に病院のカンファレンスに参加し、退院後は私たちも同行訪問して、ケアの相談を受けています。

 精神疾患の利用者は現在、45人。刑務所から社会復帰した人もいて、医療観察法にもとづく訪問看護をしています。夜中に不安になれば、電話で相談を受け、緊急訪問をすることもあります。治療を続けながら、安心して社会生活を送るための支援をしています。

 また、地域のケアマネジャーから医療的な判断が必要な事例の相談を受けることもあります。医療と生活の両方のアセスメントをして、医師に橋渡します。

小児の在宅療養には、母親の不安を和らげることも必要になる

 昨年、地域包括支援センターの人たちと事例検討する機会があり、地域住民から相談を受ける時は、訪問看護師が早くから関わることが重要だと改めて実感しました。生活障害を抱え、すさんだ生活をしているにもかかわらず、適切な医療を受けていない人は少なくありません。福祉職だけで支援をしようと思っても空回りすることが多いのです。

 そのような問題を抱えた人は病院や医師を嫌うケースが多いのですが、看護師は受け入れてくれることがあります。地域包括支援センターに相談が入れば、なるべく訪問看護師が初動時から協力して、一緒に考える事が重要です。高齢化が進む中で、医療の支援が必要な住民はますます増えていくと思います。

 2007年からは老人会で定期的に健康相談を実施しています。医療や介護のこと、あるいは正しいサービスの受け方などを元気なうちから理解することが、高齢者が生き生きと暮らすことにつながると考えています。

 訪問看護師は在宅への移行やみとり、遺族ケアだけではなく、最小限の医療で、その人らしい自立した療養生活を送れるよう、予防看護も提供しています。老人会では「何でも相談して下さいね」と声を掛けています。

 医療はますます専門化が進み、先進的な知識がなければ生活と密着した支援は難しくなっています。今後、訪問看護ステーションは病院と地域をつなぐ役割を担うことになると感じています。

 そのために訪問看護ステーションは規模を拡大し、どんな地域の要望にも対応できる余力を備え、医療と介護が連携した地域包括ケアや、自立支援などの拠点になるべきだと考えています。

 私はこれから必ず訪れる自分の最期まで「どのように生きていくのか」「どのように人を支え寄り添うのか」と問い続けながら今日も訪問看護をしています。たくさんの利用者との出会いが、私の支えになっています。

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 平原優美(ひらはら・ゆみ)1964年生まれ。87年、島根県立総合看護学院卒業。島根県立中央病院勤務などを経て、2006年から、あすか山訪問看護ステーション所長。11年に首都大学東京大学院を修了し、統括所長に。特定非営利活動法人(NPO法人)日本ホスピス緩和ケア協会の外部理事も務める。

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 「医人たちの挑戦」は今回で終わります。

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