健康・医療

日経実力病院調査

リウマチ治療、外科と薬物連携 リハビリ体制も充実 関節リウマチ編 日経実力病院調査2011

2012/3/29

 全国に約60万人の患者がいる関節リウマチは、しくしく痛む程度から関節の軟骨が破壊される重症のケースまである。初期は薬物治療が有効だが、症状が進むと滑膜(かつまく)切除や人工関節への置き換えなど外科治療も必要だ。日本経済新聞社が「日経メディカル」誌の協力を得て実施した「日経実力病院調査」では、内科と整形外科のチームで外科と最新の薬物治療を組み合わせ、リハビリテーションも充実させる施設が目立った。


甲南病院加古川病院では薬物・外科のチーム医療に加え、生活動作を取り戻すためのリハビリにも力を入れる(12日、兵庫県加古川市)

 関節リウマチは関節の「滑膜」と呼ばれる部分に炎症が起き、関節が腫れて痛む。関節は骨と骨との間でクッションの役割を果たす軟骨と、それらを包み込む「滑膜」「関節包」と呼ばれる組織などで形成され、滑膜は関節液を分泌して関節の動きをなめらかにする役割がある。

 手や指の付け根、手首、指の第2関節に起こりやすく、進行して慢性化すると炎症が軟骨や骨に侵入して関節が変形したり破壊されたりする。主に40~50歳代の女性に多く、男女比は男性1に対して女性が5の割合といわれる。自分の細胞を免疫細胞が間違って攻撃するメカニズムは分かっているが、その原因は未解明で、喫煙などの環境要因に加え軽い遺伝的影響もあるといわれている。

 今回の調査で2010年7月から11年3月に関節リウマチの「手術あり」が全国最多の182例だった東京女子医科大病院(東京・新宿)。設立から約30年がたつ膠原(こうげん)病リウマチ痛風センターは、膠原病や痛風患者も通うが、主体はリウマチ治療。患者数は7千人程度で全国の患者数の約1%にあたる。

 同センターでは発症から、変形しすり減った関節を人工関節に置き換える関節置換術を受けるまでの期間が、10年間で3~4年延びて18年になった。一方で、なるべく患者の関節を切除せず、変形を医療用シリコンで治療し元の位置に戻す手術が得意。手足の指など小さな関節も、発症前と変わらない見た目を取り戻すよう心がけているという。

 異常な働きをする免疫細胞を薬で抑えるほか、悪くなった膝や肘、手足の指などの関節を手術する。桃原茂樹副所長は「早期に診断して早期に治療を開始することが、比較的良好な経過につながる」と強調する。

 「手術なし」が661例と最多だった「甲南病院加古川病院」(兵庫県加古川市、4月から甲南加古川病院に改称)は患者の6割が関節リウマチ。内科と整形外科のリウマチ専門医12人でチーム医療を行う。

 関節リウマチと診断すれば、間質性肺炎や感染症などの副作用を注意しながら免疫抑制剤「メトトレキサート(MTX)」を投与し、3~6カ月ほど症状を見る。改善がない場合は高額だが生物学的製剤(バイオ製剤)の使用を勧める。バイオ製剤はMTXと併用すれば効果が極めて大きいが、これもツベルクリン反応や胸部コンピューター断層撮影装置(CT)、結核の確認などを行い安全な治療に細心の注意が払われる。

 同病院の塩沢和子リウマチ膠原病センター長は「バイオ製剤が効く患者は6~7割」と話す。可能な限り薬で沈静化させるが、「炎症が治まっても関節破壊が進むケースもあり、手術が必要になることも多い」(中川夏子副センター長)。手術後は、関節の変形を抑えるため院内で作業療法士が装具を製作し、理学療法士によるリハビリで日常動作の復帰を目指す。温水プールでのリハビリも行う。

 「関節リウマチの治療は、ここ10年で投薬の考え方が大きく変わった」と、東邦大学医療センター大森病院リウマチ膠原病センター(東京・大田)の川合真一教授は話す。

 以前は炎症を抑える薬などから始め、改善が少なければ免疫抑制剤などの副作用はあるが効果の大きい薬に切り替えていたが、それを見極める間に病気が進行するデメリットもあった。しかし1990年代に「関節破壊は最初の2年間で急激に進む」との研究結果が広まり、免疫抑制剤などをすぐに使い、初期の段階から病気の悪化を強力に抑える治療方法が確立された。

 11年2月にはMTXが治療の早い段階での使用を認められ、バイオ製剤も現在6種類が国内で承認されている。川合教授は「手術が必要になるほど進行する比率は大きく下がった」と話す。今後、薬物治療の比重は高まりそうだ。

 取材班=前村聡、吉野真由美、石川潤、田村城、今井孝芳、篤田聡志、八十島綾平、安西明秀、広瀬洋平、鈴木碧、編集委員 木村彰

(注)診療実績の「※」は0~9例の誤差あり、「-」は0~9例で詳細不明。医療機能評価の平均点は70.4点で、空欄は未認定か非公開。構造は「運動器リハI」が運動器リハビリテーションの経験がある常勤医師が1人以上、専従・常勤の理学療法士か作業療法士が計4人以上などの基準を満たした施設で、「運動器リハII」は経験がある常勤医師1人以上に、専従・常勤の理学療法士か作業療法士が2人以上いるなどの基準を満たした施設。

 調査概要 調査は(1)治療患者数(診療実績)(2)患者サービスや病院の運営体制(過程)(3)医療従事者の配置や医療機器など設備(構造)――の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、インターネット上の公開データから抽出して実施した。
 ▼診療実績 厚生労働省が11年に公開した10年7~11年3月の症例数(退院患者数)とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入・準備中の全国1648病院が対象(一般病床の約5割)で、病名と手術の有無で症例数を比べた。
 ▼過程 財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で(1)医療の質や安全確保のための体制(2)患者へのサービスや療養環境(3)運営体制――などを審査した結果を100点満点で換算。審査結果を公開している認定病院は1979病院で全体の約3割。
 ▼構造 医療従事者の配置、機器や専用治療室など、厚労省が定めた「診療報酬施設基準」を満たしたとして、各病院が届け出た項目を比べた。

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