くらし&ハウス

  • クリップ

ほっとニュースphoto

南三陸「さんさカフェ」、食べて語らう日常

 

2012/3/11

 ひきたてのコーヒー、カレー、パフェ。食堂「さんさカフェ」は東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町に1月末、オープンした。飲食店や集う場所がまだ少ない町の中心部。店には仮設住宅に暮らす人やボランティアがやってくる。「いらっしゃいませ」「さんさカレー入りました」。まだ不慣れなスタッフの緊張した声が響くなか、ランチタイムに突入。客足は途切れることなく増え続け、ほぼ満席になった。

 がれきが片づけ


 ひきたてのコーヒー、カレー、パフェ。食堂「さんさカフェ」は東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県南三陸町に1月末、オープンした。飲食店や集う場所がまだ少ない町の中心部。店には仮設住宅に暮らす人やボランティアがやってくる。「いらっしゃいませ」「さんさカレー入りました」。まだ不慣れなスタッフの緊張した声が響くなか、ランチタイムに突入。客足は途切れることなく増え続け、ほぼ満席になった。

 がれきが片づけられた荒野にぽつんと建つ「さんさカフェ」のプレハブは遠くからでもすぐにわかる。屋号の「さんさ」は宮城民謡「さんさ時雨」と沖縄のお守り「サン」にちなむ。震災直後から南三陸町を拠点に活動した沖縄の陸上自衛隊との交流が由来だ。店で調理、接客するのは6人のスタッフたち。それぞれが3月11日に家族や家を失い、苦難の中での再出発となった。

 コーヒー作りは佐藤絵里さん(33)。店長の内海明美さん(40)はかつての避難所の仲間や子供たちに丁寧に話しかけ接客する。震災前にスポーツバーを経営していた内田卓磨さん(40)と智貴さん(35)兄弟は、流された店の看板メニューだった「ハニートースト」を復活させた。佐藤あい子さん(60)は漁師からもらったメカブをあっという間に調理して定食に一品を加えた。鈴木淳さん(53)も料理の担当。空いた時間に特技のイラストを描いている。

 6人が出会ったのは津波発生直後に避難した志津川高校だった。炊き出しと物資配布係を任され、体育館で暮らす被災者に5カ月間、毎日食事を作り続けた。避難所は8月下旬に閉鎖し、被災者はそれぞれの仮設住宅に移っていった。炊き出しの仕事が終わり、これまでの縁が途切れることを残念に思っていた明美さんたちに、民間支援団体の「名無しの震災救援団」がコミュニティー食堂の設置支援を提案したのだった。

 ランチタイムにほとんどの人が頼む「さんさ定食」はおかず、ご飯、味噌汁に小鉢が2品付いてわずか500円。「気軽におしゃべりに来てもらうのが目的だから、価格だけは譲れなくて」と明美さん。しかし店の台所事情は厳しい。食堂を企画した民間団体の資金だけではまかなえず、今のところ6人の給与はゼロのまま。町の復興につながると信じ店を切り盛りするが、スタッフも被災者。時に不安になることもある。

 それでも人はやってくる。関東からボランティアにやってきた北野恵さんは食事をしながら午後の作業について話す。ワカメの収穫を終えたばかりの漁師の佐藤長治さんは「このカレー辛すぎっべ」と汗をかきながら格闘。幼稚園から帰ってきた明美さんの長女の采己(あやな)ちゃんはパフェに夢中。仕事の休憩時間にやってきた避難所の仲間の阿部隆宏さんは1杯のコーヒーにほっと一息ついた。

 「食べることって本当に大事だと、避難所暮らしで分かったんです。今でもご飯は独りで食べたくないなあ、って思う。だからみんながいつでも来られる食堂を目指したい」と明美さん。震災から1年を迎える3月11日、「さんさカフェ」はいつも通りオープンし、訪れる人を待っている。

関連情報

くらし&ハウス