アート&レビュー

クローズアップ

希望の道すじをさぐる物語 盛田隆二さん新刊の「二人静」を語る

2010/9/17

 「きみがつらいのは、まだあきらめていないから」の作者、盛田隆二さんが、長編小説「二人静(ふたりしずか)」(光文社)を刊行しました。原稿用紙1000枚におよぶ大作で、登場人物たちがいたわり合い、希望の道すじをさぐる物語が静かな感動を呼びおこします。盛田さんによると、「きみがつらいのは―」とこの最新作は“対”になっているとのこと。両作品について話を聞いてみました。
新作「二人静」を手にする盛田隆二さん

――「二人静」の主人公は、食品メーカーで堅実に働く32歳の男性。彼が恋をする相手は、介護施設で父親の面倒をみてくれている同い年の女性で、別れた夫の暴力や、娘の場面緘黙(かんもく)症に悩んでいる……。痛いほど切実な問題が彼らにのしかかってくるわけですが、互いに支え合い、たどたどしくも前を向いて歩いていく姿が印象的です。心温まる読後感は、「きみがつらいのは―」と共通していますね。

 「『二人静』には、私自身の経験がかなり入っています。母が亡くなってから、それまでしっかりしていた父が急に老けこみ、要介護状態になっていった。私の場合、50代で父を介護するようになりましたが、主人公の町田周吾は32歳で引き受けます。自分がつなぎ留めなければ家族が崩壊していくという絶望的な状態から、希望に向かう道すじを描けたらと思い、執筆を始めました」

 「ただ、書いていて、壁にぶつかりました。主人公たちの絶望的な状況はどうにもならない。途中で書き進めることができなくなり、半年ほどストップしてしまいました。リレー小説の原稿依頼があったのは、ようやく脱稿した直後でした。『二人静』で行き詰まっていた当時の自分を投影させてできあがったのが、『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』なんです。だから、この2つの作品はチェーンのようにつながっていて、対の作品になっています」

アート&レビュー